昔、面倒を見てあげた女の子が戻ってきた件について。

星野結斗

1:出会いは突然に。

第1話 雪の日。

 真冬、窓の外を眺めながらクラスメイトたちがざわざわしていた。

 みんな子供かよー、と言いたいけどさ…。うちの地域は3年ぶりの大雪が降って、雪を見るとなんとなく浮かれてしまうんだ。そして今はお昼の時間、俺は友達の「森岡翔琉もりおかかける」と一緒にご飯を食べていた。


「いいよな…。しゅうはどー?」

「うん…?え…、なんの話?」

!加藤のことに決まってんだろう?」

「あ…加藤か、どうしたんだ?」

「あいつ、3年生と付き合ってるって…。マジありえない…」

「まぁ…、好きだったから付き合うんじゃないのか…?別に問題はないと思うけど…?」

「問題はそっちじゃねぇぞ。あいつ、もうやっちゃったって…!」

「……あ、そっちの問題か」


 俺と森岡、そして今の会話に出る加藤海かとうかいは入学してからずっと仲良くしている友達だ。それぞれ違う中学校だったけど、それがきっかけになっていつの間にか仲良くなってしまった。多分、すでに作られたグループには入りたくなかったのもあったよな…。森岡と加藤はこう見えてもプライドがすごかったから…。


 いいことなのかよく分からないけど…。


「俺も年上の彼女欲しいな…」

「お前なら楽にできるんだろう…?」

「いや、しつこく付き纏ったりするのはダサい。俺も加藤みたいに告白されたいんだ…!」

「やはり…加藤がお前の基準を高めたかもしれない」

「柊はモテモテだから羨ましいな…、いつも2年生に呼び出されるんだろう?」

「俺、あんまり好きじゃないけど…」

「それでも、モテモテするのは嬉しいな…」


 俺の口で言うのは恥ずかしいけど、森岡の話は大体合っている…。

 モテるのは俺の意思じゃないから仕方がない。加藤は普段からイケメンってイメージだけど、俺にはそんなイメージはなかった。ただ、普通の男Aなのにどうしてこんなに寄ってくるのか自分も知らない不思議な現象だった。


 二人で話している時、廊下であるギャルが柊のクラスメイトに話をかける。


「あのね?」

「はい…?」

「柊いる?」

「柊…って神里柊かみさとしゅうですか?」

「そう」

「は、はい。ちょっと待ってください…」

「オッケー」


 急に落ち込んでしまった森岡を見て、俺はその肩を叩いてあげた。


「だから…、できる…っ」

「あの神里くん…」

「うん…?」


 この人は確かにクラスメイトの…。

 てか、ちょっと怯えてるように見えるけど…?何かあったのか…?


「そ、外で先輩が待ってるから…、行ってみて」

「そうか。ありがとう!」

「柊、お前また先輩と…!」

「あ、ごめん…。ちょっと行ってくる…」


 時々、俺は先輩たちに呼び出されてしまうんだ…。食べていた弁当を片付けながらちらっと扉の方を見ると、廊下から手を振っている先輩が俺に笑ってくれた。あの先輩は加藤の彼女の友達。しつこく俺に連絡をするけど、俺はあんまり返事をしなかった。特に話したいこともないし、、女性に興味を持っていなかったから、俺にできるのは絵文字を送るくらいだった。


「はい。先輩…」

「ちょっと屋上まで付き合ってくれる?」

「はい」


 茶色の長い髪の毛、いわゆるギャルってイメージ。

 見た目で十分モテそうな人なのに、どうして俺なんかを呼び出すんだ…。屋上の扉を開けて隣の壁に押しつけられる前まで、俺は何も知らなかった。そして急に目色が変わった先輩を見て俺もちょっと怯えてしまう。


 なるべく刺激しないようにじっとしていた。


「返事は…?」

「返事ですか…?」

「私から送ったL○NEちゃんと読んだ…?」

「いいえ、忙しくて…」


 そのしつこいL○NEって…森岡がそんなに欲しがっていた上級生の「告白」、俺は目の前の先輩に告白されたのだ。ずっと前から、多分加藤が彼女と付き合ってからか…、あの日からこのL○NEがさらにしつこくなってしまう…。俺はこの先輩のことに対して何一つ知らないのに、どうしてこの先輩は告白なんかするんだ…。これはただ、友達が付き合ってるから自分も作らないといけないって感じじゃ…ないのか?


「はぁ…、寒いから早く答えて。私じゃダメ?」

「はい…。先輩、私はまだ彼女を作りたくないので…」


 ……


 俺は素直に話しただけで、先輩を泣かせてしまった。


「はぁ…」


 なんとなくため息をついてしまう。

 傘に積もった雪を打ち払って隣にいる自販機から温かい飲み物を買う時、すぐ前にある遊び場で、ある女の子が白い息を吐いていた。


 傘も持ってないし、こんな寒い天気に服装も軽い。


「君、家に帰らないのか?」

「……」


 俯いていた女の子が俺を見上げた。寒い天気にそんな軽い服装をしてるから、手も顔も赤くなるんだろう…。このままじゃ風邪を引くかもしれないから、黙々と俺を見つめる女の子に買ってきた温かい飲み物を渡してあげた。


「寒いから飲んだ方がいい」

「あ、りがと…」

「こんな寒い日に何をしている…?」

「……」

「困る質問だったら謝る…、ごめん。じゃあ、俺はこれで」


 そしてベンチから立ち上がる時、そばに座っていた女の子が後ろから俺のブレザーを掴んだ。


「あの…、ある人を探してます…」

「人…?」

「は…い…」


 そう言ってからあの子は冷たい地面に倒れてしまった。


「……おい!大丈夫か!」 

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