【僕と天使】

asato

僕と天使

辺り一面が白に包まれたある日、僕は生まれた。

何かが次々に僕の顔にかかり、染み込んでいく。

「ん…?つめ…たい…」

僕は目を開けようとしたけれど、ぴったりと貼り付いた瞼は開かなかった。

突然聴こえた音が、だんだん大きくなり、だんだん小さくなって消えた。

辺りを探るために手を伸ばしてみると、すぐ近くに壁があった。

どうやら僕は、狭くて四角いところにいるみたいだ。


僕に染み込んでいくものはどんどん温度を奪っていき、体が勝手にブルブル震え始めた。

「誰かー!僕、ここにいるよー!!」

僕は力の限り叫んだ。

でも…いくら叫んでも何も起こらなかった。


僕の体はさっきまでより震えがひどくなり、気付くと思ったように動かせなくなっていた。

「僕…ここにいるよ…誰か…助けて…」

しーんとした白の世界に、僕の最期の声が響いた…。




「う…んっ…あったかい…」

僕はゆっくりと目を開けてみた。キラキラしていてまぶしい…。

硬かった体は自由に動いて、ふわふわした柔らかいものに触れた。

「ここは…どこ?僕は…あの時…」

言葉が解らないのか、問いかけには答えてくれなかった。

「もう大丈夫だよ?よく頑張ったね。ユキ」

僕の頭を撫でたその優しさが、僕の中に染み込んでいく。

僕は力いっぱい頭を擦りつけながら鳴いた。


「僕はユキ!僕は天使を見つけたニャー!!」

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【僕と天使】 asato @asato1019

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