9/11〜9/20

11日


高く高く昇ったところに、美しい月がありました。私は月を掴んでみたいと思いましたが、貴方は出来るはずがないと笑いました。元々天邪鬼な私です。何としてでも掴んでやる、と心中で炎を焚き上がらせました。

一筋縄では行かないことは百も承知です。手始めに、両手を上げて月をまあるく包みました。


「あの月を掴みたい」




12日


「大丈夫」

君がそう言って私の目を塞ぐ。だから目の前が真っ暗で、何も見えない。

「大丈夫、ここには見る必要のあるものなんて一つもないから」

「君、怖がりだからって無理に私を守ろうと強がらなくても……」

「……大丈夫、僕が出口まで送るよ」

「じゃあ早く行こうよ」

「……」

駄目だこりゃ。


「お化け屋敷と怖がりな君」




13日


いつか私が貴方から離れなくてはいけなくなったときは。

その時は私を奪って逃げてください。

いつか私が他の人のものになろうものなら。

その時は私を殺してください。

貴方と共にいられるのなら、どんな形でも受け入れます。貴方といられないこと、それだけが私の許しがたく、耐え難いことなのです。


「貴方と共に」




14日


眠れない?

じゃあ少し話をしよう。

明日は一時間目から数学の宿題の提出があるね……。次の時間は体育、バスケだよ。でもその次が古典。疲れて、しかも寝不足だと確実に乗り切れないだろうね?その次は化学の座学……。

……あ、早く寝る気になった?良かった良かった。夜更しはするものじゃないよ。


「眠れない夜の話」




15日


貴方はきっと、私のことが嫌いなのでしょう。

気づいていないとでも思いましたか?私、意外と目ざといんです。

貴方が私に向ける表情は、全て仮面の様に見えました。常に壁一枚に隔てられている様な、そんな気がしたのです。

それでも私は、貴方のことが好きなのです。その仮面の下も、愛しています。


「仮面を外して見せて」




16日


メモ帳に残したラブレターの下書きを、何度も何度も読み返す。読み返しては、消して、足して、多すぎて、消して、消して、また足して。

溢れんばかりの貴方への思いを、下書きに積もらせていく。

摩擦をかけすぎたせいで、もう紙はくしゃくしゃ。ああ、あの人もこの紙みたいな気持ちだったのかな……。


「もう届かず積もる思い」




17日


時代も、空間も、次元を超えてでも、貴方に出逢いたい。例えそれが、今の私に不可能だとしても。

せめて少しでも、遠くにいる貴方に爪痕を残したい。

私はここにいるのだと、貴方だけに向かって叫びたい。

決して多くは望まないから、お願い。

貴方の静寂を切り裂くような、そんな私の音が届けばいい。


「遠くにいる貴方に」




18日


貴方は自分の価値を知っていますか?

それは、この世にいる誰も持っていないものですよ?

だからその手を止めて。……だから捨てないでってば!他にも持ってる人はいる?もっと上がいるって?そんなのわかってますよ!……だから捨てないで!

例え他の人がいても、私には貴方じゃなきゃ駄目なんです!


「貴方だけ」




19日


私の夢は、外を出歩くことです。

いつか、静寂の訪れた街で。いつか、自由気ままに舞い踊りながら歩くことが出来たら。

そこには、私を見て笑って、指をさす人なんて全くいません。だから私が悲しく思うこともありません。そんな幸せな世界を、私は進みたい。

だからまず、人を消します。さようなら!


「化け物の儚い願い」




20日


いけられた花を前に思いを馳せる。

この子たちは、人間に摘まれてさえいなければ、今も地に根を張って生きていたはず。なのに今は、人間が身勝手に与えたわずかな水を、必死に取り入れるだけで。しかもその水は、いつかは新鮮ではなくなる。

可哀想。本当に可哀想。

でも綺麗なのはそのせいだろうか。


「可哀想な花々」

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