7月 文披31題参加作品(7/1〜7/31)
7/1〜7/10
1日
「バイバイ〜」
「こら、先生にはさよなら、だろ」
俺の声に女子生徒たちは笑い、せんせーさよならー、なんて声を出しながら、短いスカートを翻して駆けていく。全く、なんて声を出しながら、俺は空を見上げた。
雲一つなく、目に染みるくらいの綺麗な赤。昔と変わらなくて、童心に帰りそうだった。
「学生時代」
Day1「黄昏」
2日
その赤い魚を見ると、どうしようもなく思い出す。
君と初めて祭を巡ったとき。君が浴衣の袖が濡れるのも気に留めず、夢中になって透明の中を逃げ惑うその赤を追っていたときを。
そして今僕は、あの日のような可憐な浴衣に身を包んだ娘が袖を濡らしているのを、微笑みながら見つめている。
「あの日をもう一度」
Day2「金魚」
3日
朝起きてすぐ、宅配が届いた。大きくも小さくもない箱。差出人は不明。受取拒否をしても良かったが、何故かそれを受け取らなければいけないような気がした。色々調べた後に開けてみる。そこに入っていたのは、一枚の紙のみ。
「未来の俺へ。こういう箱の正体を解き明かすミステリーとかどうだ?」
「過去の俺より」
Day3「謎」
4日
机の上のコーヒーは、もうとっくに冷めきってしまった。湯気の立たないカップを前に、私は嘆息を漏らす。
そもそも、友人の紹介で、たまたま少し相性が良かったから、付き合っただけだ。今日のデートに君が来ずとも、別に不思議ではない。
それでも、君の隣は気に入ってたのにな。
俯き、揺れる。
「コーヒーに涙を添えて」
Day4「滴る」
5日
これをやるのは、小学生以来だった。
そこがコンビニだったから。君のすぐ真横にそれがあったものだから。それを掴んで、よし、今からやろう!なんて叫んで、君の腕を掴み、外へ駆け出した。
火を付ける。赤い火が弾けて、散って。やがて落ちる。同じように、君の瞳からも涙が弾けて、散って、落ちる。
「弾けて、散って、落ちて」
Day5「線香花火」
6日
今どきこんなの、古いだろうか。
ルーズリーフに下書きして、それ何?と友達に聞かれ、正直に答えると笑われた。もう、私は真剣なのに。
書いては消して、言葉を選んで、間違いなく、この思いが伝わりますように。
遂に本番。その綺麗な毛を墨に付けて、一画一画、丁寧に、思いを込めて。
貴方に届け。
「恋文」
Day6「筆」
7日
架け橋になんてなりたくなかった。
自分だって、それを使う側に回りたかったよ。何分も何時間も何日も何ヶ月も恋い焦がれる、そんな存在に、会いたかったよ。
なのにどうして自分は、恋する誰かを見るばかりで、運命の人に出会えないのだろう。
恋のキューピットなんて、もう懲り懲りだ。
「キューピットの憂鬱」
Day7「天の川」
8日
特にやることは無かった。無かったから、川辺に来た。ここは面白い。いつも、野球の練習をする少年とか、座っていちゃつくカップルとか、ジョギング兼犬の散歩をするお姉さんとか、色んな人がいるんだけど。
今日は誰もいない。皆忙しいのだろうか。はあ、虚しい。川の流れだけが、俺の退屈を癒やす。
「徒然なるままに」
Day8「さらさら」
9日
「今日って何か記念日だったっけ?」
「いや、別に?」
ご飯に適量のお酢を撒き、額から汗を流しながらご飯を混ぜる君。こんな暑い中、手巻き寿司か。クーラーがついている室内とはいえ、この作業は何気に疲れるし、暑い。
「ぼーっとしないで、扇いで」
「はい」
「私じゃなくて、酢飯の方!!」
「手巻き寿司」
Day9「団扇」
10日
暑いから何か作ってよ。
君がそう言うから、僕はゼリーを作ることに決めた。
何味がいい?みかん。了解。
慣れない手付きであるものの、作って、君の前に置く。君はスプーンを手に取ってプルンプルンと、その体を揺らさせて。
あの魚みたい、可愛い、なんて笑った。
少し子供っぽい、君の方が可愛い。
「jelly」
Day10「くらげ」
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