告白

田中山

告白1 不安

「キス・・してくれませんか?」


「えっ!?」


いきなり、何言いだすんだ!?

俺はビックリして彼女の顔を見るが、彼女は恥ずかしそうにしながら上目遣いで俺を見ている。

その表情を見た瞬間、心臓がドキッと跳ね上がったのは当たり前だろう。

こんな表情をされたら誰だってドキドキするはずだ!

さらに美少女なら!


「あ、ああ、うん!」


俺は少し緊張気味な返事をすると同時に、彼女に顔を近づける。

そしてゆっくりと目を閉じた彼女を見ながら唇を合わせた。

最初は触れるだけだったが、徐々に舌を入れていく。

彼女が逃げないように頭を押さえて、さらに深く口づけをした。


「んちゅ・・・くちゅ・・・れろ・・・」


どれくらい時間が経っただろうか?

ようやく口を離すとお互いの口から唾液が伸びていた。


「ふぅー・・・どうだ?満足したか?」


息を整えながら彼女に感想を聞く。

すると彼女はトロンとした目をしながら呟いた。


「まだです・・・もっとしたいです・・・」


「そっか、じゃあ次はどんな事をしようかな?」


「あなたに任せますよ♡」


それから俺たちは時間ギリギリまでイチャイチャし続けた。

その後、ホテルから出た後すぐに別れてしまった。

また会う約束もしていないし連絡先を交換したわけでもないから、もう会えないかもしれない。

ただ一つ言える事は、俺は今日彼女と一線を超えたという事だけだ。

その事に後悔はない。むしろ良かったと思っている。

だがしかし、この関係はいつまで続くのかわからない。

だからこそ俺は今の関係を大切にしなければならないのだと思った。

これはいつか終わりが来る関係なのだと理解した上で楽しむしかないんだろうな。

そんな事を思った1日だった。

最近、彼女の様子がおかしい気がする。

いつも通り学校で一緒に授業を受けてはいるが、どこか上の空のような感じだし時々ボーッとしている事がある。

何か悩みでもあるんだろうか? でもそれを直接聞くような間柄じゃないしなぁ・・ 。

「おい、聞いているのか柊木!!」


おっと、今は先生の授業中だったな。


「はい、すいません。聞いていませんでした」


素直に謝ると先生は大きなため息をつく。


「全くお前は・・・まあいい。この問題を解いてみろ」


うげぇ〜!!数学苦手なのにぃ〜!!!

だけどここで間違えたら更に怒られるだけなのでちゃんと考えるフリをして答えを書く。


「はい、わかりました」


黒板の問題を解くと答えを書いて席に戻った。

なんとか正解していたようで何も言われずに済んだようだ。危ない危ない。

それにしてもやっぱり最近のあいつの様子は変だよな?

話しかけても心ここに在らずって感じで反応が悪いんだよなぁ。

休み時間にそれとなく聞いてみるか? そんな事を考えながら次の授業の準備をしている時だった。

突然教室内がざわつき始める。

一体なんだと思って周りを見ると、そこには2人の女子生徒が立っていた。

1人は茶髪のロングヘアーで胸が大きい女の子、もう1人はセミショートヘアで胸が小さい子だ。

2人とも見覚えがある。確か隣のクラスのギャル系グループのリーダー格の子たちだ。


「ねえ、ちょっといいかしら?」


リーダーっぽい子が声をかけてきた。

正直あまり関わりたくないんだけど、無視したら余計面倒くさそうだ。


「何でしょうか?」


できるだけ刺激しないように慎重に言葉を選びながら聞き返す。


「あんた最近、真白と一緒に居るわよね?」


は?それがどうかしたんだろうか?確かに最近はよく一緒に居るけどそこまで特別な事でも無いと思うんだけど。

ちなみに真白って彼女の事ね。


「そうですね。それが何か?」


とりあえず否定せず肯定しておくか。

別に悪いことをしている訳じゃないしな。


「それってどういうつもりなのかしら?」


「はい?」


「だから!どうしてあんな地味女と仲良くしてるのよ!?」


は?


「なんだろう。僕の彼女侮辱するのやめてもらっていいですか?」


「・・何?そのなめた態度と口?」


おっとやっちまった。俺の彼女侮辱するからついつい・・。


「どうせあなたもあの子の身体目的で近づいたんでしょ!?最低ね!」


「は?」


「ああいう地味な子に一度手を出して飽きるまでヤリまくるのよ!手を出さない方が身の為よ!」


「いや、何を言ってるんですかね?」


日本語出来る?

クソッ、これだからDQNは!


「とにかく!これ以上私たちの邪魔しないでくれる?」


「いや、そんな事言われても・・・」


「言いたいことはそれだけよ。じゃあね」


「あ、はい・・・」


そのまま2人は何も言わずに立ち去って行った。

はぁ〜・・・マジ勘弁して欲しい。

ていうかあいつらが言っていることって全部事実無根じゃないか。

俺は純粋に彼女と付き合いたかっただけなのに・・・。


「柊木、大丈夫か?」


「え?」


クラスに入ってきた担任の先生が、俺の顔を覗き込んできた。

うわッ、ヒゲ濃っ!


「顔色がよくないぞ?」


「ああ、はい。なんとか・・・」


「体調が悪いなら保健室に行った方がいいんじゃないか?」


「・・少し、早退します」


「・・そうか。お大事にな」


先生には申し訳ないが、俺は早く家に帰ることにした。

今日は金曜日だし明日明後日は学校がない。つまり彼女を誘う事が出来るということだ。

今は少しでも早く家に帰って作戦を練らないとな。


ーーーーー 翌日の土曜日。


僕は朝早くから目が覚めてしまった。

昨日はあまり寝れなかったせいか頭がボーッとする。

結局、今日の事ばかり考えてしまい眠ることができなかったのだ。

まあ、おかげで覚悟を決める時間はできた。

後はどうやって彼女に話すかだが・・・。


「おはよう、お兄ちゃん」


僕が起きたことに気づいたのか部屋に入ってきた妹に声をかけられた。


「うん、おはよう。結菜さんはまだ起きてないのかな?」


結菜さんとは、家に居候している人。

ダラしないけど美人な人だ。

頭は良いらしい。

ちなみに高校三年生。


「まだだと思うよ。いつも起きる時間より早いもん」


「そっか、少し散歩してくるね」


「わかった。行ってらっしゃい」


部屋を出て玄関に向かう。

靴を履いて外に出ると、冬の冷たい風が吹いていた。


「さむっ」


コートを着てマフラーを巻いてもこの寒さか・・。

だけど、今の僕にとっては都合が良い。

頭を整理しながら歩くことが出来るからだ。


「ふぅ〜」


深呼吸をして息を整える。


「よしっ!」


そして公園のベンチに座ってスマホを取り出した。


『話したいことがあります。今日の2時に駅前にあるカフェに来てください』


送信してすぐに既読がついた。

返事はすぐに返ってきた。


『わかりました。楽しみにしてますね♡』


その文字を見てドキッとした。

緊張して手が震えてくる。


「落ち着け」


自分に言い聞かせるように声を出してもう一度深く深呼吸をした。

僕はその後、コンビニで温かいココアを買って家に帰った。

・・・・・

クルッポーとなく鳩時計を見ると時間は午後1時。

そろそろ行くかと家を出た時、ポケットの電話が鳴った。

慌てて画面を見ると、相手は彼女からだった。


「も、もしもし」


「もしかして、もう着いてたりします?」


「いや、僕も家出たばっか」


「そうなんですね」


「ごめんね。急に呼び出しちゃって」


「いえ、全然平気ですよ」


そして、少し間が開いた。

何でだろう、気まずい。


「あ、そうだ。実は私も翔くんに伝えないといけないことがあるんです」


「え?」


「その、まず先に私の話を聞いていただけませんか?」


彼女は真剣な口調で言ってくる。

何か大事なことなんだと思った僕は素直に聞くことにした。


「う、うん・・・いいよ」


「ありがとうございます。じゃあ今から言うことをよく聞いてくださいね」


「分かったよ」


電話の向こう側で大きく息を吸っている音が聞こえる。

一体何を言われるんだろうか。怖くなってきたな。


「私と付き合って下さい!!」


彼女の言葉を聞いて僕は目を見開いたまま固まってしまった。

いきなりすぎて頭の整理ができない。

え?どういうこと?なんで彼女がそんな事を言ってるの?

僕の聞き間違いなのかな・・・。


「聞こえませんでしたか?」


「き、聞こえてるよ!どうして・・・」


「あなたが好きだからです。私は翔くんの事が好きです。だから付き合いたいと思っています。ダメですか?」


「え、いや逆に付き合ってなかったの?キスまでしたのに。というか一線も超えたのに」


「えと、その・・いえまあ、ちょっと整理したかったと言いますか・・怖かったと言いますか・・」


「怖い?何が?」


電話越しの彼女が少し黙る。深呼吸する音が聞こえてくる。そして、落ち込んだような声で・・


「だって・・志賀さんと紅林さんが、私のこと体目当てで、飽きたら捨てるって・・」


は?

志賀と紅林って昨日冤罪押し付けたギャル共だよな?ふざけてんなアイツら。


「いやそんな事絶対にしないよ。約束する。そんなデマ信じなくていいよ」


「えっ、嘘なんですか・・?すいません、変な誤解しちゃって!」


「良いよ全然」


「良かったぁ〜。本当に安心しました」


「でも、なんで僕なんか好きになったの?」


告白したのは僕からだけど、聞いたことなかったしついでに聞いてみることにした。

なんか実際に見えてる訳じゃないけど顔赤くしてモジモジしてそう。


「初めて会った時からカッコイイなって思ってて、話してみると優しくて面白くてどんどん惹かれていったんで

す。それに・・・」


「それに?」


「私が困っていた時、助けてくれたじゃないですか」


「え、それだけ?」


「はい。あの時は凄く嬉しかったんですよ。それに、学校の集まりで一緒に映画見に行ったり、遊園地行ったり

した時の写真を見たら胸がキュンッとしちゃいまして」


胸キュンってやつか。


「そっか」


「はい」


なんだろう。

めちゃくちゃ照れる。

彼女に好きって連呼されるってこんな恥ずかしいんだ・・。

やっば俺も顔赤くなってきた。

電話の向こうでガチャリとドアを開ける音がする。


「あれ、真白さん、今家出たところ?」


「そうですよ〜。先にカフェで待っていてください。すぐ行きますので!」


「おっけー」


「じゃあ、切りますね」


「うん」


「また連絡しますね♡」


「う、うん。じゃあね」


通話終了ボタンを押そうとした瞬間、「好きです♡」と言ってきた。

うおぉ・・・心臓に悪い・・・。


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