第4話 大事な写真

目を覚ますと、旅の思い出と違う見慣れた景色が広がっていました。

車が家に到着すると、予想通り一太がドアを開けて駆け出しました。

一段落してから、私はお母さんにメモを手渡して、大きいお姉ちゃんに電話を掛ける様にせがみました。

電話はすぐに繋がりました。

「あっ、一菜だね」

「うん」

「今日はとっても楽しかったよ、ありがとね」

「うん、あ、あのさ、お姉ちゃん、、写真、、、くれるよね?」

「もちろん、これケイタイでしょ?」

「うん、お母さんのケイタイだよ」

「電話が終わったらすぐ送るからね。それと、折角だから一太にもかわってくれる」

「一太ーっ、大きいお姉ちゃんから電話だよ」

一太はニコニコして駆け寄って来て、小さな手でケイタイを耳に当てました。

「もしもーし、一太かい?」

「うん、一太」

「また、遊ぼうね」

「また、海に行ったら大きいお姉ちゃんいる?」

「うーん、そうだなぁ、一太が良い子にして、一菜姉ちゃんの言う事聞いてたら、居るかも知れないね」

「本当、約束だよ」

「分かった、一太と大きいお姉ちゃんの約束だよ。そしたらお母さんに代わって」

お母さんは電話を受け取って、大きいお姉ちゃんに言いました。

「今日は本当にありがとうございました。子供達と、そして私達にとっても忘れられない、良い思い出の旅行になりました」

「いいえ、こちらこそです。たまに電話してもいいですか?」

「一菜と一太が喜びますので、是非お願いします」

「ありがとうございます。では、今日はこれで失礼します」

電話が終わって、すぐに写真が送られて来ました。

翌日、お母さんが写真をプリントして、フォトスタンドに入れてくれました。

リビング用と、私専用の分と2つ作ってくれました。

家族で、あらためて旅の思い出を分かち合いました。

私分の写真は自分の部屋に飾りました。


大きいお姉ちゃんは、定期的に電話を掛けて来てくれました。

中学生になった最初の誕生日に、お父さんが私用のケイタイ電話を持たせてくれました。

友達の事や勉強の事を大きいお姉ちゃんによく相談しました。

それでも解決しない、不安や悲しみのある時は、あの大事な写真を眺めながら、セラの不思議な声を思い出すと、不安や悲しみは消えて無くなってゆきました。


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