第2話 大きいお姉ちゃん

あの海へ戻りましょう。

私はソワソワしている一太に気がついて言いました。

「一太、御飯の前に、少しだけ海入ろうか」

「うん、ヤッター!」

一太は満面の笑みで叫ぶと、浮き輪を持って走り出してしまいました。

私とお母さんがビックリしていると、隣のカップルの女の人が声をかけて来ました。

「あっ、私が見て来ますから、どうぞ準備なさって下さい」

と言って、私にウインクすると一太を追いかけて行きました。

一太を取られては大変だと思った私も、すぐ後に続いて追いかけました。

お父さんとお母さんは、カップルの荷物とか彼氏を見て安全な人達だろうと判断して、成り行きを見守る事にしました。


私と一太とお姉さんはすぐに仲良くなって、カニを探したり、砂のお城を作ったり、水をかけあったりして楽しく遊びました。

「そろそろ御飯にしない?お姉ちゃんもう、お腹ペコペコ」

お姉さんが言いました。

「一太もペコペコ」

私達3人は陣地に戻る事にしました。

お父さんとお母さんは、お姉ちゃんの彼氏に飲み物を貰ったりして仲良くなっていました。

「恵美、お弁当分けて頂いたよ!」

「わぁー、凄ーい、美味しそう、ありがとうございます」

「どういたしまして、子供達と遊んで頂いてありがとうございます」

「いいえ、私一人っ子なんで、こういうの憧れてたんですよ」

「そうでしたか」


海で始めて出逢った人達同士の、楽しい食事がありました。

私は、なんとなくお姉ちゃんの隣りに陣取る事に成功して、話しかけました。

「あのさ、お姉ちゃん」

「ん、何?」

「お姉ちゃん達はカップル?」

「そおだよ、コイツは彼氏」

「結婚するの?」

「うん、多分ね」

「愛してるの?」

「私は愛してるけど、アイツはどうかな? 聞いてみようか?」

私はドキドキしながら、

「うん」と言いました。

「おい! 敬司さ、あんたアタシの事愛してる?」

彼氏は飲んでいたものを吹き出してしまいました。

「何だって?」

「だからぁ、あんたがアタシの事愛してるかどうか、一菜が知りたいんだって」

「まぁ、そりゃもちろん愛してるよ」

彼氏はとても恥ずかしそうに答えました。

「だってさ、一菜」

お姉ちゃんはそう言うと、とびきりの笑顔で私の頭を撫でてくれました。

これは後で聞いた話ですが、お姉ちゃんはこの時、彼氏と結婚する事を決意したそうです。



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