起点-15(第壱話・完)

12月24日・クリスマスイブ

 この日も寅三郎と翔は有名なスリ犯通称・ジェロニモンを捕まえる為、ショッピングモールで張り込みをしていた。

「そう言えば、寅さん」

「ん、何?」

「屋垣の凶器、良く見つけましたね。

米さんも優のところから押収していないと言っていましたよ」

「米さんからそれよりさきのことを聞いてなくて良かった」

「どう意味です?」

「聞かない方が君のためだよ」

「まさか、証拠品を捏造したんじゃ」

「捏造とは失礼ね。自白が取れる為に、嘘こいただけ。

証拠品として提出していないからね」

「そんなぁ」驚きに真実に、立ち眩みしてしまう翔。

「じゃ、じゃあ。イエローリボンのメンバーを疑ったのも当てずっぽうだったんですか?」

「うん」あっさりと認める寅三郎は続ける。

「学生時代、あいつらの話聞いていて気にくわねぇ奴らだなと思っていたから」

「そんな理由で?」

「そうでげすよ。君が保力だって言い張ってた時は、どうやってあいつら犯人にしたろうか。

そればっかり考えていたしね」

 翔は、呆れて何も言えなくなる。

「まあ、ちゃんと彼らが犯人だったわけだし。気にするなよ」

「気にしますよ!下手したら冤罪ですよ!!!」声を張る翔。

「おい、あまり張り込み中に大声出すな」

「はい、すいません」

 寅三郎の注意を受け、謝る。

「でもさ、探偵ってこのクリスマスの時期は書き入れ時でさ、一番儲かるのに」

「そうなんですか?」

「そうなんですかってね。

お、動いたぞ。ジェロニモンが」

 寅三郎は、ガンホルダーから愛用の銃を取り出し、追跡し始める。

「ちょっと、寅さん!それ使うのは不味いです!」

 翔も寅三郎に続きジェロニモンを追っかける。

「こっちは、安い依頼料で仕事引き受けてんだ。

これぐらい大丈夫だって」

 そう言って、立ち止まり銃を構える寅三郎。

「あ~探偵はつらいぜ」

 ボソッと呟いた寅三郎は、ジェロニモンに向けて銃を撃つのだった。



                             第壱話・完

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探偵はつらいよ。 飛鳥 進 @asuka-shin

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