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「それなら、これで最後の質問。」


「うん……。」


「俺、多分、この後も告白される。」


「……。」


「誰かと付き合ってもいい?」


「え?」


「沙希と付き合えなくて辛い俺を慰めてくれる子と。」


「弓弦がそうしたいなら。」


「そっか。

じゃあ、誰かと付き合うわ。」


「でも……。」


「でも?」


「相手は傷付かない?」


「沙希に片想いしてるの伝えても、2番目でいいからって言う子いるんだよ。」


「……。」


「その子と毎日キスして、たまにエッチもする。

合意の上なら問題ないわけだよ。」


「……。」


「ねぇ、想像してよ。

俺が他の女子とそういう関係になる事!」


想像なんてしたくない……。


「想像した?」


「しない。」


「何で?」


「弓弦、そんな事しないもん。」


「するって。

何なら沙希の前でもするよ。」


「ヤダ、しないもん。」


「するって。」


「しない!」


「じゃあ、俺、どうすればいいよ?」


「今まで通りがいいの!」


「それは無理。

欲求不満でおかしくなりそう。」


「何で今まで通りじゃダメなの?」


「ゴメン、何か結論出ないよな。」


「今まで通りがいいよ。」


今まで通り、一緒に帰って、遊んで。

たまに勉強して。

そんな日々が幸せ。


「咲真にも彼女出来て、今まで通りって無理じゃん?」


「……。」


「気付いているだろ?

一緒に過ごす時間が減ってるの。」


「それは彼女大事だし……。」


「俺だって、沙希は大事だよ。」


「……。」


「誰よりも大事なんだよ……。」


誰よりも大事……って言葉を聞いた瞬間、何故か涙が溢れて来た。

何でだろう?

私は誰よりも大事に思って欲しいの?


「沙希?

何で泣いてる?」


「……。」


「嫌だったら逃げて。」


弓弦が私を抱きしめた。

それが凄く心地よいと……気付いてしまった。

これは友達だからする事?

それとも彼女にする事?


「俺、女友達をこんな風に抱きしめる事ないよ?

沙希だからだよ?」


「……。」


「嫌じゃない……よな?」


「うん……。」


「彼女以外にしないよ?」


「してるじゃん……。」


「もうしないよ。」


「ヤダヤダヤダ!」


「して欲しいの?」


「……。」


して欲しいと言葉に出来ない。

首を縦に振った。

私はこの温もりを一人占めしたいとさえ思い始めてしまった……。


「もうしないのヤダなら、彼女になろうか?」


「……。」


答えが出せない。


「じゃあ、手をはなすよ?」


「ヤダ……。」


「どうするの?」


「なる……。」


「え?」


「もう言わない!」


弓弦の粘り勝ちだ、これは。

私は彼女に『なる』という事を選んだ。

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