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「沙希!」


私が堺君と戻ったらすぐに弓弦が駆け寄って来た。


「弓弦、用事は済んだの?」


「済んでるような、済んでないような……。」


「じゃあ、行った方が……。」


「分かってるよ!

でも気になるんだよ!」


「え?」


「ちょっと来て。」


弓弦に手を掴まれる。


「ちょ、ちょっと!

ど、どこいくの?」


「人の少ない場所!」


「でもキャンプファイアが……。」


「すぐ戻るって。」


これは何を言っても気が済まないと戻らない。

黙ってついて行って、さっさと戻る方がいいかもしれない。


「えっと、ここは?」


着いた場所は集会場と書いてある建物だった。


「入って。」


「勝手に入っちゃダメでしょ?」


「キャンプファイアの準備で使ってたから、終わって片付けるまで、鍵は開いてるって。」


「そうなんだ……。」


とりあえず入ってみたけど、電気がついていないから暗くて見えない。


「あのさ。」


弓弦の口調がいつもと違う気がした。


「ん?」


「俺、いつまで待ったらいい?」


「えっ?」


「沙希を彼女にするって事。」


「えっと……。

いきなりどうしたの?」


「ジンクスがあって、このキャンプファイアの最中に……。」


キャンプファイアで何かあるんだっけ?


「キャンプファイアの最中に告白して、カップルになれた人は一生続くんだって。」


「それ、キャンプファイアじゃなくても続く人は続くじゃん?」


「そうだけど……。」


弓弦が何か言いたそうで言わない。


「あのさ。」


「ん?」


「俺、沙希いるからって断れないのキツいんだ。」


「え?」


「このキャンプに来て何人かに告白されてさ。

沙希の事好きだとか言っても、沙希は俺の彼女にならないじゃん?って言われて。」


「それは……。」


私は弓弦の彼女になるっていうのと、友達でいるって事の差がよく分からない。


「友達でもいいじゃん?」


「友達だったらエッチ出来ないじゃん?」


「え?

私とシたいの?」


「前から、そういう対象って伝えてなかったっけ?」


「うーん……。」


「今すぐなんて言わないって。

付き合ったら、お前の了承を得て……。」


「ダメって言ったら何もしない?」


「ずっとしないのは嫌だ。」


「ですよねー……。」


私は答えが出せない。

どうして答えが出せないって考えたら……。

今まで通りの関係が崩れるのが怖いからだ。




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