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桜井君と真奈がいなくなって、どのくらい経ったか分からない。

でも待っていると長く感じてしまうもの。


「アイツら、遅いな。」


「遅いね。」


「腹でも壊してるのか?って事にしたら、別に良いけど。」


「そうだよね、すぐには戻って来ないもんね。」


先生に見つからない内に帰ってくると良いんだけど。


「ただいま……。」


噂をしていたら二人が戻ってきた。


「先生がうろついてる。

どうしよう?」


「俺と桜井が一緒に歩いてるなら、トイレって事で済むだろ?」


「だよね。

あとは出るタイミングかな。」


「下手に出たら、マズいな。」


出て見つかるのがマズイのか、中にいるのが分かるのがマズイのか。

どっちもどっちだよね……。


「あっ、あっちに行った。

今のうちに出よう。」


「おう!」


桜井君と堺君がテントから出る。


「またね!」


「うん、また。」


小さな声で挨拶をすると、桜井君と堺君はいなくなった。


「ねぇ、沙希?」


「ん?」


「待たせてごめんね。」


「え?

そんなに待った?」


待ってないフリをした。

本当は待たされたって思ってるけど。


「あのね。」


「うん。」


「桜井君に告白された。」


「そうなんだ。」


「うん……。」


真奈は照れくさそうだ。


「あのね。」


「うん。」


「付き合う事になった。」


「そっか。」


何て言ったら良いか分からない。


「気を付けるけど、気になる事があったら言ってね。」


「え?」


「学校では今まで通り友達っぽくしようって決めたんだ。」


「そうなんだ?」


「うん。

迷惑かけるかも?だけど、宜しくね。」


「別に普通に友達でいてくれたらいいよ。」


「ありがとう、沙希!」


真奈が私に抱きついてきた。

こんなふうに桜井君にも抱きつくの?って思ってしまったけど、言わないでおこう。


「堺君は告白するって知ってたんだってね。」


「……。」


聞いたと言っていいか分からない。


「堺君がアドバイスとかくれたみたい。」


「そうなんだ?」


「彼女いるっていうし、何か落ち着いてるって桜井君が言ってたよ。」


「確かに落ち着いてるね。」


「私も落ち着きたいな。」


「そうね、落ち着いてくれないと、私も落ち着かないよ。」


「沙希も落ち着いてるよね。」


「そう?」


「クールビューティみたいな?」


「え?」


「キレイだし、クールだし?」


「それはほめてる?」


「ほめてるよ。」


真奈と雑談していたら、いつの間にか寝てしまって。

途中から記憶が無い……。

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