第78話 やるなって事やりたくなる
「おいおい、均衡状態か?よく見えない。」
『2つ入口は守れているようですが。
もう一方のルシファル様たち以外、全滅しています。』
マジか。見慣れないもんだな。本当に。
『戦争です。躊躇うと死にますよ。』
はいはい。背負うもんは背負ってるからな。
死ぬ訳にはいかんが、まだ殺しに抵抗がある。
理性なき魔族とか、外道畜生とかならだが。
『そんな外道畜生反応ありますよ。
推察するに、前方の魔力反応が歪です。』
「ん?確かに変な気を感じるな。」
「どうされましたか?」
「いや、ロキよ。
あの2人なんで逃げてるんだろうねって。」
空から遠目だが、後方に下がる2人の悪魔の姿を視認できた。
「恐らく撃ち漏らしか、何かしらで撤退している可能性がありますね。」
ヘルガーの見解を教えてくれた。
「なら、あの2人に聞いた方がいいかな。
ちょうど、本陣へ向けて走ってるみたいだし。」
「流石はキャスト様です。
敵を捉え、拷問にかけ、本陣を割り出すのですね。お見事です。」
ねえ。この話をもし俺が考えていたなら、さっきの外道畜生反応は俺にならない?
『確かに。』
確かに。じゃねえーよ!やらねえわ!
何回目だよこのセリフ!
「『安心してください。
お館様が出ずとも我々で対処を。と言いたいですが、未知数です。警戒は必須であります。
しかし、このチャンスを逃すのも痛いかと。』」
「ならば私が行こう。」
「ロキ。大丈夫?同胞だけど。」
「何を仰いますか。
私の守るべき者はあなた様です。それだけで十分です。」
凄くカッコいいです。惚れます。
「『・・・・・』」
恐怖を察知し、俺の身体が震え上がる。
『??マスター?』
何でもない。
「1人で大丈夫なのか?」
「安心しろ。お前みたいにヘマはしない。」
「また膿だらけにされたいのか?ゴミが。」
ヘルガーとロキがまた喧嘩しそうになってます。血の気が多いのね。
「『早く行ってこい。モタモタしてる暇はない。
我々はこのまま飛んでいくが、1人だけ置いていく。終わり次第、こちらへ合流しろ。』」
「分かった。」
そう言ったロキは、そのまま空中から飛び降りる。
飛行魔法を使ったため、ゆっくりと何かが降臨するかのように2人の前に向かって行く。
「いきなり強者が現れる絶望感って半端ないだろうな。」
『よくその絶望を味わう側ですからね。』
うるさ。間違っていないけど。
「ん?なんか2人が逃げてきた方面が。」
「確かに。
あそこだけ穴が空いたみたいに空間ができていますね。」
よく見ると、堕天さんと暗黒騎士がいる。
って、ルルじゃねえか!囲まれてる!
「お待ちをっ!キャスト様!」
ヘルガーが俺を止めた。
「『落ち着いて下さい。お館様。
まだ戦っている最中であり、周りが近づけずにいる状態です。』」
「焦った。」
「我らを大切に思っていただいていることに、改めて心から感謝を申し上げます。
しかし、御身の身が1番なのです。
アイツもそれを分かっているかと。
ですので、突っ込む真似はおよし下さい。」
「ありがとう。お前たちを信じてる。」
「『!!』」
俺は躊躇いなく、その中心地へ飛んでいった。
『やると思いました。
やるなって言うほど、やるお方ですから。』
「ハァ!」
「フッ!」
キンッ!と剣と剣が交差してる。
「やりますね。魔法師かと思いましたが。」
「天界での剣捌きが必須だから。
魔法で剣を作るのも当たり前だよ。」
「だが、近接向きではないから決め手に欠ける。と言った所ですか。」
ヴァルツーはよく観察をしていた。
近接戦のエキスパートとして相手の動きを見極めていた。
「魔法で身体能力を上げていますが、限度があります。
それに、ここは地上界の龍国。
ならば、天界ほど力は出ないでしょう。」
「本当に嫌なくらいよく観ているね。」
ルシファルはなんとかヴァルツーの攻撃を捌き切っているが、押されている方である。
次元魔法を併用しているが、全てを断ち切られる。
「(天界魔法は範囲や時間による隙ができる。
つくづく苦手な相手だ。)」
「どうしましたか?来ないのですか?」
「いや。来たからいいかなって。」
「???」
突如上から騎士の頭へ目掛けて、1人の男が落下してきた。
ドゴッッッッッ!と勢いよく、そのまま頭を踏みつけ地面まで押し潰す。
「俺、参上。」
どこかの決めポーズをしていた。
「お帰り。キャスト。
少しピンチだったから助かったよ。
それと足下。」
「ん?うぉ、なんだこれ!」
すぐさま、脱兎の如くルルの後ろに隠れた。
今ので気力がほぼスッカラカンになった。
「ぐっう。ひ、久しぶりですよ。
頭を踏みつけられ、お気に入りの鎧事地面につけさせられるとは。」
凹んだ頭の鎧装備を取ると、イケメンフェイスが現れた。
もう少し踏んでおけば良かった。
『考え方が陰湿です。』
うるさい。
イケメンは俺の敵だ。目標を排除する。
『今の状態だと、逆に排除されますよ。』
「キャスト?大丈夫。僕がいるから。
君が近くにいてくれるなら問題ないね。」
「そ、そうか。なら良かった。
・・・・すまん。助けにきたつもりが。」
「気にしないでいいよ。
決め手に欠けてたから苦労してたんだ。
いいダメージが入ったよ。きっと。」
「ありがとう。」
ルルは再び魔法剣を構え、魔法陣を展開する。
「効きましたよ。
お陰で手加減しないで済みそうですがねっ!」
魔剣を持った騎士が急速に詰め寄る。
そして、今度は上から斧が落下してきた。
「!今度は斧か!」
「隙あり!」
俺は高速で移動し、彼の股間を蹴り上げた。
「がっ!がぁぁあぁあぁぁぁ!!」
渾身の蹴りが入ったぜ。フフ。
『何してるんですか。』
「きゃ、キャスト。
フフ。なんで一撃を・・ププ。」
ルルが爆笑を堪えている。
そりゃそうだ。
あんな蹴り技をこの戦場で使う奴は普通いない。
『普通やりません。』
禁忌技を使ったまでよ。
「キャスト様っ!ご無事ですか!?」
ヘルガーが俺の身体をペタペタと触り、確認してきた。
「うん。大丈夫。
それよりもごめん。我慢できなかったんだ。」
「大丈夫です。
我々はそんなあなた様だからこそ、絶対の忠誠を誓っているのです。」
アレ?
ヘルガーがいつもよりかわいく見える。
「キャスト様・・」
「ヘルガー・・」
お互いの距離が縮まった所で、身体が揺れた。
「『さっきから掟破りな事ばかりしてるけど。』」
巨大な黒龍さんに睨まれております。
背中の冷や汗がぱないです。
「チッ。他の龍はどうした?」
「『言われずとも各方面へ援軍と波状攻撃を開始しさせている。』」
「き、きさまっ!な、名前を聞かせろ!」
剣を地面に突き立て、身体をなんとか起こしている暗黒騎士さんだ。
下半身の痛みのせいかプルプルしている。
「ハッ。」
「笑うな!外道が!」
ありゃま、外道になっちった。
「俺名前は・・・イケメンコロスキーだ。」
『は?』
「そうか。
その名前、確かに覚えたぞ!
次は俺が、必ずお前を斬る!」
股間を抑えながら転移して消えていった。
「なぜ、そんな偽名を。」
「ある意味偽名ではない。」
「『お館様の方が何倍もかっこいいですよ。』」
「ありがとう。今夜は楽しみにしてくれ。」
「「なっ!」」
その後、荒れに荒れた。
3人が勝手に喧嘩を始めるから、ここだけ戦闘が激化している。
周りの魔族をどんどん巻き添えに。
岩陰に隠れて退避したはいいが、あそこだけ世紀末だ。
あの中にいたら死ぬ。
『でしょうね。分かって焚き付けたのでは?』
ノリと勢いだ。
『私がバカでした。申し訳ありません。』
失敬な。
たまたまだけど、アレで1つの入口は完璧に守られただろう。
『作戦にしてはかなり酷いですが。結果論で見ると確実かと。
後はマスターの姿が魔族側に知れ渡ったことでしょう。
これから苦難に立ち向かって下さい。』
あ、やべ。
名前は違くても、姿形はバレてーら。
やったわ。また目をつけられた。
「他の入口へ移動しないとな。
けど、どうやって・・ん?」
1匹の龍が近づいてきた。アマギだ。
「お館様。お待たせ致しました。
あなたのアマギが推参致しました。」
呼んでたっけ?
「何となくです。」
「まあいいや。
俺を他の門に連れて行ってくれないか?」
「かしこまりました。」
アマギは翼を広げ、俺をお姫様抱っこで飛んでくれた。
キュンキュンしそうです。
「とりあえず、近くの正門に向かいましょう。」
「了解。頼むよ。あの3人は・・・」
「大丈夫です。
クロエ様はご理解されるかと。」
理性と理解って結構違う気がする。
見て見ぬふりで行こうか。
「にしても。改めて元いた場所を見ると地形が大分変わってるな。」
3人の抗争跡がエグい。
穴ぼこのクレーターだし、岩とか真っ二つだし粉々だ。
案の定だが、魔族は死にまくり。グロっ。
「力は確かですから、あのお三方は。」
「よし!今日を何とか凌ぐぞ!
そのためにも中央で情報収集だ。」
とりあえず、3バカが暴れてくれているので、もうあそこだけ大丈夫だろう。
しかし、話を精査するに正門とハイネチームは大丈夫なのか?
正門は大丈夫か。
シアと勇者だ。この世界トップレベルチームだ。
「となると、ハイネチームが心配だ。
ちゃんと黒龍チームと合流できてるかな。」
「お館様の命であれば大丈夫でしょう。」
だといいがね。
何であれ、ミアのとこへ急がなくてはね。
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