気ままに気のままに〜無力な俺を苦労が襲ってくる〜

第46話 龍国準備へ ナマカ増やす

「てな訳で仲間を増やそうと思う。

　ギルド留守組で同時に何かしらの行動があれば、更に『ファミリア』の名声にも繋がるし、ランクも上がるという訳よ！」

　皆が起きた後、会議室で集まり、この話を打ち明けた。

「かしこまりました。

　その件はいつか打診してみようと思っておりました。」

　シアが賛成してくれた。

　というか、ほぼ全員賛成してくれた。

「暫くは6日？ぐらい時間があるから、できるだけ皆んなで集めよう。

　エラルドとシェリオは龍国遠征メンバーの編成と相談をよろしく。

　居残り組もいるからそのつもりで。」

『逃げましたね。

　仮にマスターが選択し、選択漏れが発生した人は、きっと直談判し戦争を起こします。』

　それな。

　この2人なら上手くやってくれると信じてる。

　だから僕逃げるね。

『チキンですね。』

「旦那様もお仲間集めを？」

　ミアが聞いてきた。

「そうだね。久しぶりに。」

「かしこまりました。

　護衛は・・敢えてつけない方がいいですね。

　流石に国の中でドンパチは起きないですからね。」

　それはフラグだね。

　これで俺は誰かと戦うことが決まった。

『しかし、ここで護衛を打診すれば、今後の活動にも尾を引くので下手に発言ができません。』

　その通りだよ。

　マジで最悪だ。このタイミングでこれかよ。

　望み通りだが、望み通りにはいかず。

「そしたら、我々も動きましょうぞ。

　女子連も大分休めたでしょう。

　では、主人様。またお会いしましょうぞ。」

　ドロン！と消えたブラス。

　かっちょええ。

「エインは私と一緒に行くよ。

　アンタがバカな事しないようにね。」

「姉ちゃんの貧乳エクササイズにくらっブヘッ！」

　あ、腹パンで気絶させられてる。

　いつのまに。此奴、できるぞ。

「ハイネ。私たちは一緒に行こうかしら。」

「はいです！ナタリアさん！」

「では、アリシア様。我々も。」

「そうだな。行こうか。クラウディアよ。」

　続々と会議室を後にして行く。

「アルちゃんは私と一緒に生産系仲間を探そうね。」

「ま。そうなるわね。」

　ロリっ子姉さんと悪のマッドサイエンティストは共に生産系探しの旅へ。

「俺も行くか。」

『私がいるので選別はお任せ下さい。』

　ポンコツの選別を宛にしていいのやら。

『ボンクラに比べたら大分マシかと。』

　なまくらから毒を吐かれる。

　外に出るとふと気づく。

　仲間ってどうやって集めればいいの？

『バカですね。本当に。』

　うるせ。

　王国は既にアイツらが探してるしな。

『他国に行かれてはどうですか？』

　あー。うん。うん？今からか？

『はい。今からです。』

　無理くさくね？いや、行けるな。

　今の俺の力なら空飛べるし、行けるか。

　しかし、何処に・・・皇国しかねえ。

『そうなります。

　皇国ならマスターも知っている筈です。』

　じゃあ行ってくるか。

　人に見えない場所に移動してと。

「せいっ！発進！」

　気を身体に展開し、足にブーストをかけて空へと発進した。

『予想より速度が上がってますね。』

　そりゃ、訓練の成果と気力コントロールの賜物だろうな。

『森を抜ければ皇国が見えますね。』

　改めて奥を見つめるとデカいな。

　我が故郷の皇国様よ。

『そのまま国内に入りましょう。』

　門を通過しなくていいのかい？

『身元がバレて厄介事に巻き込まれたいならどうぞ。』

　かしこまりました。国内へ着陸致します。

　皇国へ到着した。

　知らんレストランの裏手から町へと出た。

　相変わらず人も多いな。都心だからか。

　1人1人元気だし、活気もある。

『女神アシュタルテ像ですか。』

　シンボルだし。この国の。

　中央の噴水場に大きな銅像の女神へ注目していた。

『神を讃えねば生きていけないのは息苦しいですね。

　管理されているみたいで。』

　なんだ？

　ヤケに珍しくぼやくやないか。

『気のせいです。忘れて下さい。』

　そうか。

　あまり深くは突っ込まないようにした。

「行き先は・・・ここになりますよね。

　だって知り合いとかいねーもん。」

　奴隷館である。

『露骨ですね。行き先が。

　もう少し皆さんマシな場所に行かれてるかと。』

　うるせー！コミュニティが狭いの！

　そう言いつつ、奴隷館の扉を開ける。

「いらっしゃいませ、ってあら？

　お久しぶりです。」

「これはこれは。私をお覚えですか？」

「覚えてるよ。

　受付のエルフさんとブリガンドさん。」

　待ち構えていた訳ではないだろうが、久々に出会った。

　今回はお金あるよ。

　クエスト報酬がたんまりと懐にあるからね。

　装備品はって？正直使いこなせないし、あんま防具とか意味ないかな。

『身体の硬さが取り柄ですからね。』

　いや、柔軟だよ。

　カチカチなのは気力による鎧だからね。

　全部カチカチじゃないよ。

「今日も何か、見繕い来られましたかな？」

「そういうことだ。だが、すまんが・・」

「分かっておりますとも。

　ですが、取引ではありませんが、何人か購入していただければ幸いです。」

　商売上手だな。

「分かった。

　今日は元々購入するつもりだからな。」

「これは、ありがとうございます。

　見ない間に立派になられましたな。」

「そりゃどうも。」

「では、私がご案内いたしましょう。」

　2階から奴隷たちを覗く事に。

　いつ見ても耐え難いな。

　いい感じに弱らされてる。

　ガリガリだが、死にそうで死なないぐらいの調整よ。

『管理されてますね。怖いぐらいに。』

　それな。あまり見たくはない。

「ごゆっくりご覧になられて下さい。

　他の階や廃棄奴隷を見たい場合、私に一言よろしくお願い致します。」

「了解した。」

　と言っても、誰が誰だが知らんのだがし。

『私が鑑定しましょう。

　その代わり、よく見詰めて下さい。』

　なにその苦渋？

　分かったけど。早めにね。

　なるべく見たくはないよ。

『かしこまりました。』

　そう言いつつ、1周し終えた。

「どう？一通り見たけど。」

『そうですね。1人いますね。』

　何十人か見つめたけど、1人かよ。

　俺のSAN値下がりまくりだぞ。

『しょうがないかと。

　全員お救いになりますか？

　きっと神のように崇められますよ。』

　残念だが、俺に勇者や物語の英雄、主人公じみたことを期待するな。

　現実を嫌ほど見せつけられてんだ。

　それぐらいは解ってるつもりだ。

『あまり無理しないで下さい。』

　そうだな。

　代わりにとっとと終わらせてくれ。

『かしこまりました。

　では、その1人に向かいましょう。』

　誘導されるように、1人の少女の前に来た。

　って、女かよ！もう懲り懲りなんだが。

『女性の奴隷率は高いですからね。』

　需要と供給か？

『いえ。単純に男の奴隷は売れやすいので。

　戦わせられるし、物運びや働き手として。』

　なるへそ。

　この小さい少女レベルだと、こ綺麗なので、変態貴族宛になる訳だね。

　奴隷の需要には引っかからないって事か。

『その通りかと。良かったですね。

　お眼鏡に叶って。』

　やかましいわ。

「君。名前は？」

　声をいきなりかけられたことに驚いたのか、ビクッとした後、弱々しく口を開く。

「さ、サラティーナで、です。」

　あら？俺怖いかな。

『顔が・・かと。』

　失礼やね！優しそうな好少年ですが！

「す、すまないね。怖がらせたかな。」

「い、いえ、だ、大丈夫です。」

「おや。この子をご所望で？

　一応、スキル以外は大したことはないかと。

　魔力は封印されており、魔法も使えないので。

　もしや、何か解除する手立てがあるとかですかな？

　是非とも見学させていただければ・・。」

「あーあーあ、とりあえず、購入手続きとまだ他に見たいからいいかな？」

「なんだか話を逸らされてしまいましたが。

　解りました。では契約をしましょう。」

　金貨を数枚支払い、契約をすんなりと済ませ、檻から出した。

「ありがとう・・ございます。」

「すまんが、今は自力で歩いてほしい。

　食事やらは後ほど用意しよう。」

「！！そ、そんな！恐れ多いです。」

「いいよ。とりあえず、ついてきてよ。」

　2階を後にして上の階に登って行く。

　3階はと！？こ、こいつは

『また変なことを。』

　いやだって、いたんだって思った。

　そこいたのは、黒い翼の堕天使だった。

　厳重封印プラス、更に弱体化させられている。

　女か男か分からん。包帯のぐるぐる巻だ。

　ただ翼の色から察する。

「キャスト様。そちらはかなり危険かと。

　奴隷の中でも上質でかつ素晴らしいですが、暴れ出す危険があります。

　特に奴隷術を破ることもありますがゆえ、おススメはしません。

　どちらかというと、イロモノ枠として取り扱っております。」

　イロモノって飾りやん。

　まぁ、綺麗な黒翼だもんね。

　飾って置くって意味なら妥当か。

　その代わり中の人は衰弱死だけどね。

『あ、この人。』

「では、これを下さい。」

「えーと。よろしいのですか？

　責任は取れませんよ。」

「大丈夫大丈夫。

　何かあっても俺のせいだからさ。」

　だってほしくない！？堕天使だよ！

　ファンタジー好きならたまらない堕天使さんだよ！

　男だろうと女だろうとバッチ来いや！

　あ、両刀使いは遠慮したいです。

『しょうもなさすぎるかと。』

　無視だ！無視！

「はぁー？かしこまりました。

　では、契約は後程にしましょう。

　何かあっては困りますからね。」

　そして、この階を後に4階の生産系に行った。

　他はいなかったよ。ぱっとしたのがさ。

「どうだ？」

「？？」

『そうですね。ここは1人います。』

　今度は・・男か。どれどれ。

「初めまして。お名前を聞かせてください。」

「あ？俺か？俺はガリウスだ。

　見てくれはイカついが、腕は保証するぜ。」

『借金とギャンブルで破滅した人ですね。』

　碌な奴ではなかった。やめとくか。

『いえ、彼の衣服製作技術とアクセサリー製作技術は一級品です。

　他を探しても見つからないでしょう。』

　そんなに！なにその派手でイカつい見た目なのに器用な指先の持ち主は！

「じゃあ雇うので、よろしくお願いします。」

「お、ありがてえな。

　ここじゃ酒も碌に飲めやしないからさ。」

　こうしてガリウス、謎の堕天使、サラティーナと契約し、いよいよ最終階の5階へ。

「ぶっ殺す！こっから出せ！ぶち殺してやる！！」

　あのすいません。

　きて早々、暴れていらっしゃるお方が1名いますが。

　弱っているとは思えない勢いである。

「あれは？」

「申し訳ありません。今大人しくさせます。」

　ブリガントが手を暴れている女に向けた。

　すると、女は苦しそうにのたうち回っている。

『奴隷術を行使したのでしょうね。』

　なるほど。こんな事ができるのね。

「すいません。お待たせしました。

　どうぞごゆっくりとご観覧下さい。」

　うーん。気になるね。あの子。

　メビウスはどう思うよ。

『引き取っていいかと。』

　あれは人種かな。

『いえ、龍人ですよ。

　龍人の中でもハーフとされ、限りなく人に近い存在です。』

　何それ？どう考えても国家絡みで、きな臭い雰囲気だ。

　でも雇うか。戦力になりそうだ。

　あのタフさだ。格闘家でも打たれ強さは非常に重要だからな。

『格闘家ではないかと。』

　聖剣に呆れられつつも、気絶している龍人女と契約した。