第1話 まずは基礎から!③
「――というわけなんです!」
「……はあ」
衝撃的な告白から三十分ほど経った後、
詳しく話を聞くために、駅の近くにある
カフェに入ってから一通り話を聞いて
現在に至る。
調度いい壁側の席が空いていたのでお互い
向かい合うようにそこに座った。
飲み物だけ注文して、届いてから話を始めていた。
明日見さんの話をまとめると、明日見さんの
弟さんがモンクエをやっていて興味をもったので一緒にやってみた結果、その弟さんに
かなり強めに下手くそと言われたとのこと。
明日見さん的にはかなり悔しかったらしく、
上手くなりたい一心で自主練を始めたみたい
だが、なかなかうまくいかなかったようだ。
周りにモンクエをやっている女友達も
いなかったことと、弟さんにも頼りにくい
状態な為、困っていたらしい。
そんな時に、たまたま僕達の会話でモンクエの話題が出ていたのを聞いて、僕がその話をしていたことから今回のカラオケまでの計画に至ったみたいだ。
「……なるほど、だから朝から少し嬉しそうにしてたのか」
どうりで陽真が僕にかなり気を使うわけだ。
昔から僕がカラオケ苦手なのは知っていた
ので、陽真の性格なら当然だ。
「でもそれならなんでわざわざ僕なの?陽真もモンクエやってけど……」
「――えっ?!帯刀君もやってるの!?」
「もしかして、聞いてない?」
「うん……聞いてない、2人の会話で天河君がモンクエのこと楽しそうに話してるの聞いただけだったから……だから私から皆とカラオケ行こうって帯刀君に提案して天河君も誘ってもらったの」
「そうだったのか、でもそれならあの時に
話してくれれば良かったのに」
そういうと明日見さんは少し、暗い表情を
していた。
それを隠すように苦笑いをして返事を返してくる。
「うん……いざカラオケで話してみようかと思ったらちょっと恥ずかしいかなって……
皆いたし、女の子がやってるようなゲーム
じゃないし、実際私の友達もやってなかったからつい……やっぱり私みたいな女子がやるゲームじゃないかなぁ……」
明日見さんが落ち込んだ様子でそう言ったが、何故か明日見さんがそう言ったことに対して悔しさが出てきてしまった。
「――何で?」
「……え?」
「好きなものを好きって言うの、別に悪いことじゃないでしょ?男だからとか女だからとかじゃなくて、明日見さんだって興味をもって面白いなって思ってやってみて、全然できなくて悔しいなって思ったから出来るようになりたいと思ったんでしょ?」
「……えっ、と」
「……まぁ僕が言えたことじゃないけど、
あんまり他の人と交流もつの苦手だし、他の人に興味がないから、自分の好きなゲームのことばかり話をするの陽真しかいないし」
真剣に僕の話を聞いていた明日見さんは驚いた表情をしていた。
確かに周りの目が怖いところはあると僕も思うが皆がスポーツやこのテレビ番組が好きだと思うのと一緒だし、そんな理由で面白いと興味をもったものをやめてしまうのは勿体ない気がした。
これはおそらく僕が好きなモンクエのことだからこそ、少し熱くなっている気もするけど。
自分が好きなものだからこそ目を逸らしたくないと思った。
そんな風に考えて僕は自分の言ってることと、やっていることは矛盾しているな
気づいた。
なんでだろう。
明日見さんの話を聞いて、さっきの明日見さんの少し寂しそうな表情を見て、僕はそう思ってしまったのだ。
そう明日見さんに伝えたいと思ってしまった。
(何を言ってるんだ僕は…)
「だから……その、つまり……別に男女関係ないし!全然恥ずかしいなんて思うことはないってこと!」
自分で何を言っているのか分からず、無理矢理結論を押し付けてしまった。
「――ふふっ」
目をキョロキョロさせている僕をよそに、
明日見さんにはいつもの笑顔が戻っていた。
「うん!ありがと、天河君!そうだよね、ゲームは楽しくやるものなのに、なんか色々考えちゃったみたい……」
「……ああ、うん」
返事に対応できずに、気の抜けた返事を
明日見さんにした。
既に注文して出されていた僕のメロンソーダと明日見さんのアイスティーの中の氷が溶け、お互い半分ほど飲んでいたそれがグラスに水滴が溜まり、中身は溶けた氷で少し量が増えていた。
それをお互い飲み干して、一旦心を落ち着けるようにため息をつく。
そして……。
「いいですよ、明日見さん、僕が教えます」
「え?いいの?」
「勿論、ここまで回りくどい誘われ方されて断るほど僕も酷い人間じゃないですから」
「その言い方はちょっと酷くない?!」
頬を膨らませて軽く僕を睨んでくる明日見さんの姿を見て僕は、多分彼女は凄く楽しい事には、一生懸命な人なんだなと思った。
あと少しだけ、先走り過ぎて抜けている部分も可愛いと思っていた。
今まで明日見さんと言葉を交わす機会を自分から逃してきたわけだが、これからはそうもいかないだろう。
けど、きっと楽しいものなんだと、そう思えるような気がしていた。
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スクールクエスト ゼロノオト @zeronooto
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