歩く歩く歩く

シヨゥ

第1話

「吸っては吐いて、歩く歩く歩く」

 彼は腕を振りながら進んでいく。

「日の光を浴びて、歩く歩く歩く」

 日の光に照らされてどんどん前へ前と進んでいく。

「人間が動物だってことを忘れちゃいけない。日の光とともに起き、日の光の中活動し、日の光がかげるときに寝床に向かい、暗闇の中で眠る。そんな動物のあたりまえを忘れちゃいけないんだ」

 彼はそう言う。

「たとえ便利になったところで人間は動物。それを忘れちゃいけない。当たり前を忘れちゃいけない。当たり前が当たり前でなくなるからこそ調子を崩す。それを忘れちゃいけない」

 部屋を引っ張り出された時はイラっとした。ひとりにして欲しくて引きこもっていたとに何事だと思った。だが話を聞くうちにこれは好意でやっていることだと理解して何も言えなくなる。

「だからお前も歩く歩く歩く」

「はいはい。分かった分かった」

 だから大人しく従うことにした。

「病み上がりなんだ。ほどほどにしてくれよ」

 聞くか聞かないかは任せるにして注文だけはする。それぐらいの権利はあるだろう。

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歩く歩く歩く シヨゥ @Shiyoxu

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