第9話 令嬢の胸騒ぎの午後
「ユメ?今日は集中できてないですね…。」
「あっ、ごめんなさい…!」
日曜の午後、有名なフランス人の講師に、
ピアノのレッスンを受けていた私だったが、音が思うように伸びない。
集中しようとすればする程、表現しようとする音が逃げていく感じ。
理由は分かっている。胸につかえている心配事のせいだ。
「今日は、ここまでにしましょうか?まぁ、ユメも年頃だから色々あるとは思いますが、うまく気分転換して、切り替えていって?
次回までにこの部分、よく練習しといて下さいね。」
「は、はい…。すみません。」
私は、気まずい思いで講師に謝った。
講師の口ぶりと表情は、私が恋の悩みを抱えているとでも思っているようだった。
ピアノのレッスンを終えた後、英語の家庭教師を待つ間、私は自室でメイドの入れてくれた紅茶を飲みながら、スマホに手を伸ばした。
りんご、今日里見先輩の家へ行くって言ってたけど、大丈夫かしら?
あの子に里見先輩と話し合いの場を待つよう言ったけど、あの女ったらしが、どんな卑怯な手を使ってくるか…。駆け引きが苦手なあの子が太刀打ちできるだろうか。
まぁ、今日は両家のご両親がいる訳だから、滅多な事にならないと思うけど…。
ピロン。L○NEの着信音がして、私はすぐさま画面を開いた。
りんごからだ!
『こんにちは、夢ちゃん。里見先輩とのお話し合い、何とか乗り切りました!
夢ちゃんが色々助言してくれたおかげだよ?ホントありがとう!
スタンガンはいざという時、他のところに置いてきちゃったから使えなかったけど、ボイスレコーダーは効果抜群だったよ!
少女漫画とかで、よく女の子が男の子に壁ドンされるシーンあるけど、あれって、実際されると怖いんだろうねぇ。
私先輩に床ドンされて、すごく怖かったもの。
少女漫画のヒロインって、勇者だなと思いました。
日曜は夢ちゃん忙しいのに、長くなってゴメン。ではでは、また学校でね〜。』
ピロン。
またね〜。と可愛いウサギのキャラが手を振っている絵文字が続けて送られてきた。
「〰〰〰〰?! 何これ?全然状況が分からん!
床ドンって何?それ、もう押し倒されちゃってるじゃない!? りんごぉ〜!!」
私は電話に切り替えて、発信ボタンを押した。
数回の発信音の後、りんごの驚いたような声がした。
『ありゃ、夢ちゃん?日曜の午後は習い事で忙しいんじゃ…?電話して大丈夫?』
「それどころじゃないわ。心配で何も手につかないのよ!ちゃんと分かるように状況を説明しなさい!この天然りんご!!」
『??』
私は呑気な親友に食ってかかったのだった。
*あとがき*
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