どこまでも

藤泉都理

奇遇






 常緑樹が占める中で、桜と楓が点在する森。

 これが、あいつの塒。

 枯れ木と、色も形も薄っぺらい植物しか存在しない、死に充ちた荒廃の地ではなく。

 風と陽光と雨と、栄養が、すべての植物に、生物に滞りなく行き渡る生に充ちた豊潤の地。


 似つかわしくない。

 脳裏に過った不要な感想は、即刻身の内から廃棄。


 あいつを喰らう事だけに集中しろ。


 仲間の人魚を喰らったあいつを。

 烏天狗を喰らう事で。


 私は。

 漸く。

 仲間を取り戻す事ができるのだ。


 喰らえ。

 喰らえ。

 喰らえ。




 それだけでいい。

 それだけで。





 なのに、





 出会わなければよかった。










 


 あいつを見た瞬間に。

 まだ動作がぎこちない足が疼いたのは。

 歩き疲れた所為だ。










(2022.5.12)


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