承諾(前編)

林風(@hayashifu)

第1話

承諾(前編)


できちゃった!



ある日、彩子(さいこ)に告げられた。

「できちゃった!」

おどおどしながら彼女は言う。

「なにが?」

のんびりと、公園のベンチに肩を広げ、座っていると、待ち合わせの時間より、少し早い時間に現れた彼女が、すごく慌ててる。

「赤ちゃん!」

大きな声で言ったものだから、砂場で遊んでいる我が子を見届ける、ママさんたちが、ぎょろっとこっちを見た。

武も、急に縮こまって、ことの現状を清算しはじめる。

すると、

「え?ええええええ?」

と、大声をあげた。

ついには砂場で、きゃっきゃ、きゃっきゃと、遊んでた子たちまで驚いて、みなこっちを注目しはじめた。

行き場もないので、武らは、その場で話を進める。

「妊娠検査薬ってやつ?」

「うん。陽性だって」

「病院に行った?」

「まだ」

身に覚えがないわけではない。最近、ちゃんとしてなかった。でも、武たちは、まだ、結婚も、婚約もしているわけではない。

当たり前だけど、こんなことはじめての経験だった。

こういう時って、みんなどうしているんだろうか?

「とにかく、病院行こうよ。産婦人科!スマホで調べるから」

近くのがいいかな?なるだけ、評判のいいところを探してみた。

「待って!友達に聞いてみる!」

彩子も、武のとなりのベンチに腰をかけ、スマホをいじりだす。

「うん。わかった。え?そうなの?」

彩子は電話の向こうで、友達と相談しはじめた。

電話を切ったあと、こう告げた。

「安達さんところがいいんだって。先生がとにかく、やさしいらしいの」

「安達さん?スマホで調べるね」

「ん~うん。もう、住所は聞いた。この近くだって」

武たちはバスに乗って、向かうことにした。

バスの席に二人て座って、黙り込む。彩子は、少しおびえているようだ。武は、キュッと彩子の手を握った。

「大丈夫だよ。彩ちゃん。ぼくもちゃんと、ついてくから」

「うん」

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