オマケ

 渇く。

 渇く。

 とても喉が渇く。

 水をいくら飲んでも、全然足りない。


 「やっほー、お見舞いにきたぜー」


 病室のベッドの上にいる彼女は、そんな喉の渇きと戦いながら、それを悟らせないように自分を訪ねてきた友人をみた。

 幼なじみの、格好も態度も男の子ようだが彼女と同じ女性だ。

 彼女のために掲示板で助けを求めた、【スレ主】である。


 「あ、ありがとう」


 「どうした、顔色悪いなぁ。

 検査の結果良くなかったか?」


 気遣う【スレ主】に、彼女――掲示板での呼称名【A】――は曖昧に笑ってみせた。

 しかし、その視線が向くのは、スレ主の首筋だった。

 細く白く、そしてきっと黄昏時の夕焼けよりも赤い赤い血が流れているだろう、その場所を凝視する。

 鼓動が早くなる。

 まるで、恋をしたときのように、胸の鼓動がうるさく鳴り響く。


 ≪あぁ、なんてなんて……≫


 ごくり、と彼女の喉が鳴った。

 そして、知らず口をついて言葉が滑り出た。


 「――おいしそう」


 最後に、彼女が彼女として幼なじみを見た。

 幼なじみの顔は驚きと恐怖に一瞬で、彩られる。

 その顔に、感情に今までに味わったことのない興奮が彼女を埋め尽くす。

 そして、彼女は、ずっと傍にいて心を尽くして、他ならない彼女を救うために奔走してくれた、大事な大事な幼なじみの友人、その首筋に獣のように嚙みついた。


 

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