「5分で読書」あの角を曲がれば、けーさつのおにーさんが。
@tokyonishiakitani
第1話 けーさつのおにーさんとの出会い
「いってきまーす!」
女子高生の井上有希子は、学校が楽しいと感じる日もあれば、窮屈だウザイと感じる日もある。まぁ、そんなもんだろう。だけど、ちょっとした楽しみもある。
なぜなら、この角を曲がると交番があるからだ。
(あのけーさつのお兄さん、今日は立番してるかな?)
ドキドキ
有希子がけーさつのお兄さんのことを気にしだしたのには理由がある。
あれは有希子が、高校に入学してすぐのこと――
「キャー! やめてー!」
有希子はひったくり遭っていた。
後ろから走ってきた男に、カバンを掴まれたのだ。
普通ならカバンを手放す人がほとんどだろう。
だが、有希子はキャーキャーいいながらも、頑なに自分の鞄を手放さなかった。
「何だよ! 離せよ! なんで離さねーんだよ、このガキは!」
ひったくり犯も戸惑いながら、有希子を振り切ろうとするが、女子高生とは思えない力強さで、カバンを離さないため、早く走って逃げることもできない。
「待てー! そこ! 何をしている!!」
声のした方を見ると、けーさつのおにーさんが、有希子とひったくり犯の方に向かって走ってきている。
「ちぃっ!」
ひったくり犯は、有希子のカバンを有希子の方に向かって投げ飛ばし、自分はお巡りのお兄さんとは、逆方向へ走って逃げた。
突き飛ばされた有希子は、後ろから倒れ、足を怪我してしまう。
「君、大丈夫かい!?」
けーさつのお兄さんが、有希子に駆け寄って、背中を支えてくれる。
「怖かったぁ」
「もう大丈夫だからね」
お兄さんは、そう言うと無線で他の警官を呼んだ。
「あの……ひったくり犯を追いかけないんですか? 私なら、もう大丈夫です」
「あぁ、だが、君を一人にするのは危ないからね。今他の警官に、ひったくり犯を捕まえてもらうように応援を呼んだから、君の傍にいるよ」
そう言われて、確かに有希子が一人になった時に、ひったくり犯が戻ってきて、再び襲う可能性もあると気づく。
(そっか、このおにーさん、自分が盾になって私を守ってくれたんだ)
有希子は、地面に座ったまま、うっとりとお兄さんを見上げる。
(かっこいい……かっこいい横顔)
お兄さんは、私と目が合うと口元を抑えてから視線をそらした。
「あのー。足の傷大丈夫? っていうかパンツ見えているよ」
「え!」
有希子は慌てて足を閉じる。そして、今日、どんなパンツをはいていたかを思い出す。
(しまった、今日は猫のパンツをはいていたんだった。もっと大人っぽいのをはいていればよかったよ……黒の紐パンとか)
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