第三章 お住まいとお仕事

気になる修道院


 とんとんと、ドアがノックされました。

 クロエさんが、ドアを開けますと、メイドさんが立っていました。


「大変申し訳ありませんが、夕食のご用意が出来ません、またお風呂も殿方たちがお入りで、今日は無理かと思われます」

「空腹の上、お疲れでしょうが、今夜はご勘弁願います」


「いいですよ、私どもは元は女官、このような事は慣れていますし、それに大主教様に助けていただいた身ですから」

「私は収納持ちなので、いくらかパンを収納しておりましたので、夕食はそれを取り出して食べておりました」


「ところで、いまいいでしょうか?教えていただきたいことがあるのですが?」

「何でしょうか?」


「バンベルクの街に入ったとき、城門横に小さい建物があるように見えましたが、夜でよく分らなかったのです、何の建物ですの?」

「あぁ、あれは元のバイロイト女子修道院です、あまりに手狭となり、移転となったのです」

「このバンベルク大主教館の管理ですが、誰も住んでいなくて、時々私どもが掃除や草取りに行きます」


 とても小さい石造りの平屋建ての建物だそうで、修道女が4人ほどで生活していたとか、屋根裏に部屋が4室、1階が祈祷室と小さい食堂などのようです。


 敷地はそれなりにあり、修道女さんが畑にチャレンジしたようですが……土地が痩せていて、実らないのですね。

 井戸はありましたが、飲める水ではない……新たに井戸を掘るのには、多額のお金がかかり、それなら移転したほうがいいとなったとか。


 しかも隣がマルドゥク神殿警護騎士団バンベルク分団の兵舎だそうで、女子修道院としては、好ましくない環境とかね。

 いろいろ教えていただきました。


「いろいろ教えていただき、ありがとうございます」


 するとクロエさんが、


「今日は大変でしたでしょう、私も女官をしていましたからよく分ります、ご飯はまだなのでしょう?」

「それは……」


 それを受けてエマさんが、

「泊まりの方はどのくらいおられるのですか?」

「メイドが6人だけです、あとは帰られました」


「スティックプレッツェルなら6個ぐらいなら分けられるわ、もらっていただけるかしら」

「旅の食事のはずでしょうし、悪いです」


「いいのよ、そのまま食べるより、オーブンで温めた方が美味しいわよ」


 例のリュックから、解凍されたスティックプレッツェルを6個取り出します。

 焼き芋用の袋なんかも取り寄せ、それに入れています。


「これ、食べてね♪オリーブオイルでも塗れれば美味しいのですけど……」

「オリーブオイルなら厨房にあります、少しぐらいなら使っても怒られません」


 通販で98円のテイクアウト用のオリーブオイルがあるのですが、パッケージがね……


「ありがとうございます、皆で分けます」

 嬉しそうなメイドさんでした。


 クロエさんが

「ありがとうございます、プレッツェルならおかしくないし……」


「いい人ね、クロエさんって」

「エマ様こそ、雰囲気を読んでくださって、助かりました」


「お腹が1杯ですから、もう寝ましょうよ♪ベッドも1つですし」

 そうなのですね、シングルベッドが1つ……

 忙しいのか、誰も気がつかなかったのですね。


 ランプの油も切れかけていましたし……


「久しぶりのベッドですけど、私が寝袋使いましょうか?」

 というと、クロエさんが、

「当然、抱き合って寝ます♪お嫌ですか?」

「いえ、でも私は元男、あんなことやこんなことを、するかもしれませんよ♪」

「あんなことやこんなことは、していただきますよ♪」


 で、抱き合って寝たわけです♪

  

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