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色々と考えていた時のこと、ふと顔を上げるといつの間にか眼前にスライムが迫っていた。
スライムは体をゴムのように伸縮させ、僕に向かって瞬時に飛びかかってくる。地面を這う時とは比べものにならない速さだ。当然、僕は避けきれない。
ハッとした時には粘液のような体の先端が眼前に迫り、あっという間に視界の全体が若草色に染まる。
「んぐっ! んっ! んーっっっっっっ!」
僕はスライムに顔全体を覆われてしまった。引きはがそうとしても油みたいにヌルヌルとしたスライムの体が滑ってしまい、掴むことが出来ない。その体は手のひらや指の間からすり抜け、すぐに元の状態に戻ってしまう。まさに液体そのもの。
くっ、苦しいッ! 呼吸が……出来ないっ!
まるで滝壺にでも落ちたみたい。藻掻いても藻掻いても事態は変わらず、息を吸い込もうとしてもスライムが僕の口も鼻も塞いでいて空気が肺に入ってこない。早くスライムを顔から引きはがさないと、僕は窒息死してしまう。
焦る! 必死になってスライムを掴もうとするけど、何度やってもそれが出来ない!
う……ぐ……力が抜けて……視界も揺らいで……。
「判断が少し遅れたようだな。スライムは弱いモンスターとして知られているが、密着されたら危険なヤツだ。今のアレスは身をもってそれを理解していることだろう。この状態になったら火系などの攻撃魔法で排除するしか助かる手立てはない。あるいは仲間の力を借りるか――」
ミューリエの素っ気ない感じの声が歪んで聞こえてくる。半透明なスライムの体を通した向こう側に、淡々とした彼女の顔がわずかに見える。
は……早く助けてよ……。
すがるような瞳で彼女を見つめるけど、直後に絶望の底へ突き落とされるような言葉が聞こえてくる。
「私はアレスから手を出すなと言われているからな。明確に助けを求められない限り、何もしない。そういう約束だ」
「……っ…………っ…………」
「もはや反応も出来ないほどの虫の息か……。まぁ、これも運命。お前の体は融かされ消化され、スライムの血肉となることだろう」
――次の瞬間、僕の意識は完全に闇の中へと堕ちた。
BAD END 6-3
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