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 どんな状況であろうと、今の僕が頼れるのは意思疎通の能力だけ。それはこの試練が始まった時から意識していることじゃないか。


 ダメで元々。力が発動するまで念じ続けてみせる。攻撃も限界まで耐え抜いてみせる。


 僕は気力を振り絞って立ち上がると、おぼつかない足取りで少し前へ出た。そして深呼吸をして再び心を落ち着け、鎧の騎士に向かって念じ始める。


『お願いだ、戦うのをやめてくれ。僕は敵じゃない』



 心が静かだ……。無駄な力が抜けたからだろうか……。



 さっきと比べて意識が集中できている。少しは手応えもあるように感じる。周囲の空気が凛として涼やかで、体が癒されていくような感覚がわずかだけどある。これを続ければきっといつかは力が最大限に発動しそうな気がする。


 顔を上げれば、鎧の騎士が僕に向かって真っ直ぐに迫ってくる。でも力が発動しそうなのに、まだ充分な手応えがない。圧倒的に時間が足りない。次の攻撃にも耐えて念じ続けられる自信はない。


 程なく僕の眼前に鎧の騎士が佇んだ。腕を振り上げ、僕に攻撃を仕掛けようとしている。ダメだ、力の発動が間に合わない……。


 頭上から勢いよく振り下ろされる巨大な拳。大ダメージによる戦闘不能を覚悟し、僕は強く目を瞑って体を硬直させる。


 直後、僕は全身に猛烈な衝撃を受けると同時に床に叩きつけられ、意識を失ったのだった。


 防御しようと意識したのがいけなかったらしい。全身から力を抜き、弾き飛ばされた方が衝撃を受け流すことが出来てダメージが少なかったかもしれない。



 ――その後、僕はこの時の恐怖と痛みが頭に焼き付き、二度と鎧の騎士と戦うことが出来なくなってしまった。



 BAD END 6-10

 

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