第23話  世界一の親友同士に近づいた記念

「うっそ! これお前作ったの? ホントにっ!? だってこれ本物みたいだぜ、すっごい精巧だし綺麗で高そうじゃん」


 今日一番・・・いや、少年と出会ってから間違いなく一番ジェノのテンションが上がった瞬間だった。

「キウイめっちゃ可愛いっ、凄い!」そう作品を覗き込んで絶賛していると、隣から微妙な震えが伝わってくる。気にせずキウイに顔を近づけてどうやって作ったのか、ジェノは矢継ぎ早に質問していった。


 石膏? 色とりどりの光沢ある石の様なものは、ガラスみたいに透けている部分やマーブル状に混ざりあった不思議な模様をしていたりと、とても美しい・・・それに甘い良い匂いもする。

 この毛羽だったのなんだろ?本物の苔みたい。


「こんなの作れるなんてめっちゃ凄い! やばいよ! だってキウイ超可愛いもん、本物みたい! 朝からってそんな直ぐ作れるものなのか? 僕なら一週間かけても絶対に作れない! 尊敬ものだ」


 ようやく置物から顔を離し、「お前マジで天才だったんだな!」と横を向くと、少年は肩を震わせ俯いていた。

 え? どうしたんだ、体調悪いのか? そんな強く拳握りしめたら痛いんじゃ・・・


「おい、具合悪――」


「食べてみる? それ」


 肩に手を置かれ、声を震わせながら言われたセリフをジェノは理解できなかった。

 んん?なんて言った今?


「それ全部、お菓子で出来てるんだ。食べられるよ」


 俯いている少年の言葉に驚愕する。

 食べられる・・・これが?置物じゃねーの!?


「なにそれすっごい、どういうこと!? お菓子ってマジ? 何で出来てるんだこ――」


「ジェノ君っ!」


「ぅお!?」


 突如両手を広げ抱きついてきたカルシェンツを受け止めきれず、後ろに倒れる。

 ベンチが長くて良かった、普通の長さなら頭から落ちてたぞ!?


「ちょっ、何!?」


「そんなに喜んでくれるなんて嬉しいよっ、私の拙い作品でこんなにジェノ君の心を動かせるなんて! 私は、私はっ・・・この喜びをどう表現していいのか判らない!!」


「え、あの」


「ああっ、今日はなんていい日なんだ! 確実に世界一の親友同士に近づいた記念すべき日だ、そうだろう!」


「いや、まて」


「パーティをしようか! 城の広間で開こう、今日という日を祝おうじゃないかっ、うんそれが良い! べリオン、今すぐ準備だ」


「よくない! いいからマジで退け、パーティなんかやらないからな! ・・・ちょっ、お前どこ触ってんだバカ!」


「ああ、すまない」とカルシェンツは体重をかけていたことに気付いて体制を立て直した。

 しかし体に回した腕はそのままだ。


「離せってば、おいっ近いって!」


 全然外れない!

 思いっきり押してもビクともしない腕にジェノは驚いた。

 こいつ見かけによらず、凄い力強い!

 ジェノは女の子だが、10歳の今の段階では同年代の男の子と比べて力の差はほぼ無い。むしろ年上相手でも勝つ自信があった。


 僕より細い感じなのに・・・ちょっとショック。


「さあ、何でも質問してくれたまえジェノ君! どれが気になるのかな!?」


 興奮気味な美少年が顔を覗きこんでくる。

 近い近い近い近いちかいちかいちかい――


「えっ、あーえっと・・・この緑色の、何?」


 上の部分を指さすと、耳元でウキウキした声が降ってくる。


「水あめ!」


「こ、これは?」


「チョコ。そっちはムースだよ!」


 息がかかる程の近距離ではしゃがれ、ジェノは眉を寄せた。


「ちょっと離れて!」


「え、なんで?」


 なんでじゃねえ!とにかく肩に回した腕を離せ!



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