悪魔が憑いたヒロインを悪魔祓いの俺が助けたら、俺が死んでも復活させてしまう程に好意的なんだが病み過ぎてヒロイン同士で殺し合ってるらしい
三流木青二斎無一門
第1話 やれやれ、死んでしまった
学校のグラウンドの中心で夜辺逞の肉体は10分割に切断されて息絶えていた。
発見者は早朝、学生のテスト準備のために出勤した教師がその惨状を発見した。
教師はすぐさま救急車と警察を呼びその場で待機他の教職員でと連絡をしたところで救急車が遺体を確認した後その場で死亡と判断した。
警察が到着すると事件性の疑いがあり学校側に急行するように告げる。
学校側は表向きは校舎の老朽化により建物が一部損壊した為に生徒全員は休校ということになった。
これにより夜辺逞の死亡が生徒たちに告げられたのは休校が明けて三日後のことだった。
いつも通りの朝、ホームルームの時間に遅れまいと時間通りに生徒たちが机に着する。
月ノ宮カレンも、始業開始前の十五分前に机にカバンを置く。
そして、十分前の時間にやってくる夜辺逞を待つ。
「あれぇ…遅いなあ」
だが、夜辺逞は来ない。
時間が来ると、教師が重苦しい雰囲気を纏いながら教室に入って来る。
月ノ宮カレンは、夜辺逞は遅刻でもしたのか、それとも休みであるのか。
そんな事を考えながら教師の言葉に意識を集中しておらず…。
「落ち着いて聞いて欲しいが…夜辺逞君は…残念ながら、お亡くなりになった。詳しい事情は、キミたちの精神を考慮して、詳細は伏せる…彼と仲良くした子もいるだろうけど…この事実を、ゆっくりと受け入れて欲しい」
どよめく教室の中。
一呼吸遅れて、月ノ宮カレンが反応する。
「え?」
夜辺逞の死亡。
教室もその事実に驚いている。
しかしそれは、親しいからと言う理由ではなく自らが通う教室に、自殺者が出たと言う事実に驚いてる様子だった。
真に夜辺逞の死に対して驚きを隠せないのは、月ノ宮カレン一人だけだった。
教師が今後の対応、自殺者を出さない為の心のアンケートなるものを配ると言っている最中、月ノ宮カレンはか細く事実の否定を口にする。
「うそ…」
「月ノ宮?」
教師が、明らかに様子の違う月ノ宮カレンに気が付くと、教卓から離れる。
「ウソ、…そんなの、嘘ッ、だって、だって彼が、死ぬ筈無い…」
黒い髪を乱しながら、彼女は机を薙ぎ倒して立ち上がる。
「落ち着いてくれ、月ノ宮、お前の気持ちも分かる、けど」
教師の言葉を聞かない様に耳を塞ぐ。
「ウソ、嘘ウソッ!!そんな筈ないッ!やめてッ、嘘を吐かないでッ!夜辺くんッ、夜辺くん!!」
泣き出して床に崩れる月ノ宮カレン。
学年一の優秀な生徒が、此処まで乱れる事なんてあるのかと、周囲の生徒は驚いていた。
教師が近づき、大丈夫だと心配する様に言うが、…そんな言葉は、今の月ノ宮カレンには届かない。
夜辺逞が死んだ。
その事実は、月ノ宮カレンにとっては虚実であると疑いたくなる内容であるが…しかし、若干ながら、受け入れている自分も存在する。
夜辺逞の正体を知る月ノ宮カレンからすれば…彼の仕事は死ぬ可能性も存在していたからだ。
その後…月ノ宮カレンは体調不良と称して学校を早退。
彼女は夜辺逞の事を想いながら、ベッドの上で泣き出していた。
「夜辺くん…」
学校にも食事すら摂らず、月ノ宮カレンは、このまま夜辺逞の後を追いそうになった時だった。
ふとベッドから立ち上がると、部屋の中心には、一枚の封筒が置かれていた。
無気力であった彼女だが、その封筒の魅力に操られるが如く、封筒に触れて、中身を確認する。
そして、月ノ宮カレンは、暗い夜の中、家を飛び出した。
六月七日、夜の時間帯。
月ノ宮カレンは学校敷地内に残されている旧校舎へと足を運んでいた。
老朽化が激しい旧校舎は窓ガラスが割れており修復する費用も掛けられていないのでその場しのぎと言ったように新聞紙でガムテープを使って窓を封鎖されていた。
塞がれた窓ガラスだが、一部分だけが新聞紙が破られて窓が開けられていた。
破れた窓から旧校舎へと足を踏み入れる。
もちろん土足であり上履きに履き替える事もない。
廊下は薄暗く、木造建築物である為か、歩くたびに木板が痛ましい音を鳴らす。
前は暗い為に、月之宮カレンはスマホの懐中電灯モードを使い、床を照らしながら歩き続ける。
階段を上り2階へと上がっていく。
そして階段から3番目の教室には仄かな明かりが灯されていた。
部屋の中へ入ると、教室の中には複数の女性達が立っていた。
薄桜色の髪をツインテールにした、今時で言う量産型衣装を着込む
両手を重ねて不安を消そうと擦っている
セーラー服を着込んだ黒髪ロングの姫様カットの
茶色い髪に黒いリボン、シャープな眼鏡を装着した
クリームの様な色をしたウィッグを付けた女性服を着込んだ男性、
シャツを着崩して、肩元から下着の紐が見える、
そして月ノ宮カレン。
七人の女性が旧校舎へと集まっていた。
「誰が呼んだの?」
女教師、金鹿皆子が周囲を見回す。
彼女の手には、一枚の手紙があり、それを上に掲げて全員に見える様にした。
「今夜の十二時、この旧校舎で話がある、…誰が届けたのかしら?」
金鹿皆子の顔にはクマが出来ていた。
つい先日まで、彼女は病気と偽って教職を休んでいた。
この一週間はとにかく、夜辺逞の事を想い、部屋の中で呆然としていたらしい。
無気力を抱きながら、夜辺逞との思い出を馳せていた矢先に、この手紙が彼女の部屋に届いたのだ。
玄関を通してではない。部屋の中心に置かれたテーブルの上に、気が付けばこの手紙が置かれていたのだ。
彼女の家はとにかく厳重であり、裕福な家庭である。
警備員が屋敷の周りを警戒しており、門以外の場所から侵入すれば、放し飼いにしてある猟犬が侵入者を迎撃する。
厳重な警備がかかっている為に、彼女の部屋はおろか、屋敷に入る事すら難しい。
それを可能にするとすれば…それは最早、悪魔の域である。
「偶然ですね、先生。私も呼ばれました」
そう言って、月ノ宮カレンは、片手で握り締める手紙を取り出した。
「内容は先生と同じ、それに加えて、…今夜行う内容も書かれている」
封筒の中にある手紙は二枚。
一枚は、金鹿皆子が口頭で説明した、旧校舎の招集。
そしてもう一枚は、教室の中心に描かれたアートが示している。
月ノ宮カレンは、もう一枚の手紙を確認する。
『今夜、夜辺逞を復活させる』
『必要な人材は七名、もしも彼を生き返らせたければ、以下の手段に従え』
手紙には、死者を蘇生させる為の呪文と、手段が記載されていた。
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