最終話番外編

番外編:空の封印編1

 それは前置き、イベントがとあるプレイヤーとは関係ないところで起きていた。プレイヤー時計兎、彼は基本、RPGゲームであるはずなのだが、シミレーションゲームのように町の発展と維持をしている頃、別のプレイヤーがフラグを踏んでいた。


 帝国と言う国で起きる、数々のイベントとクエスト、その中で貴族令嬢を助けたとあるプレイヤー組が、ここ最近帝国の動きがおかしいことに気づく。


 モンスター、エネミーの数が多く、イベントに深く関わりそうなイベントを進めていた。


 その中で一度、NPCでありながらプレイヤーであるロザリオを帝国に連れて行く流れがあった。だがしかし………


「アァァァァァァァァァァァァァァァァマンゥゥマアァァァァァァ―――!?」


 星樹こと大聖樹の姫君がギャン泣きしてしまい、ロザリオは同行を拒否した。これには運営は吐き気を催すほどの悲鳴を吐くのだが、残念なことにプレイヤー側には一切伝わらなかった。


 こうして運営側からしたらイベントヒロインことロザリオ抜きで、イベントをしなければいけないという事態に発展。GMルームでは会議が行われる。


「なぜ星樹を赤ん坊AIにしてロザリオがママ認定されている?」


 すいません。兎さんに意地悪するためにAIを赤ん坊にしました。そう口が裂けても言えないスタッフ達は一斉に視線をそらして、モニターでよしよしと赤ん坊をあやして、優しい笑みを浮かべるロザリオの様子を見ながら、深く考え込む。


「い、一応彼女は我々側ですので、その、来てもらうという選択肢はあります」


「ほう、それをすれば最後、ロザリオがキーマンとして活動するイベントだとプレイヤー達にバレるな。少なくても兎さん達はそう考えるだろう」


 それに静まり返り、沈痛な顔持ちで赤ん坊を見る。


「そもそも前線に来ると思うか?」


「星樹ちゃんのレベル上げは一向にされていないのでレベル1、一応大聖樹の加護で死ににくい状態です」


「戦闘はできるか?」


「い、一応、戦闘経験としてベビーシッターコボルトとリーフベアを屈服して倒した扱いで、経験値は入ってます」


「それは戦闘と呼べるか?」


 また視線を逸らすスタッフ。


 一番問題であるのは、兎さん今度のイベントスルーしそうなことだ。


「この人、ここ最近充実しているからな」


「石動さんとリアルで仲良いから、大切にしてますね」


「ぶっちゃけもうこのゲーム、ロザリオのためにしている感が伝わってます」


 そう残りのキーマンである、大聖樹の姫君、次世代の魔王、新たな竜王、そして女神の生まれ変わりがイベントスルーと言う事態に、スタッフ達は頭を痛めた。


「今度からイベント関係は別スタッフが引き継ぐんだな」


「もともとギリギリ運営でしたから。売れてやっと余裕が生まれ、いま組まれて発案されている状態です。スポンサーも付きましたし、次からはこんな失態は無いかと」


「元々、最先端技術を使っているのに、苦しい運営だからなウチは。あの人のおかげでノーバグで進んでるのが身に染みる」


「社長がその辺は隠さずに、スポンサーなどに話を通してるので、このまま残るそうです。手が空けばチート対策も問題なくできるので、あの人が辞めることはありませんね」


 娘に持ち出したデータを盗まれた父親。問題になっているが、功績がなんとか打ち消しそうだ。ペナルティはもちろんあるが、辞めることにはならなそうだ。っていうか辞めることをやめて欲しい。現場が荒れる。


「そういえば裁判沙汰になったが、いまのところどうなってる」


「問題ありませんよ。自分を保護してくれる人から余計な事を言うなと言う顔をされてもなお、自分達は正しいと行ったことを泣き叫びながら言ってる人達でした。あれではもう止まりませんね」


 それに伴う批判などは起きているが、ゲームには関係はないと話を聞き、少しホッとする。


「となると、この事態は補足の事態を予測できなかった初期スタッフと関係者のミスだな。もう悩んでいても仕方ないけど」


「どうします? ロザリオをコアにして復活する厄災は無しですか?」


「ロザリオを助け出すための要素踏めるかどうかもあるからな。いまさらロストでもさせたら叩かれるぞ」


 ロザリオがロストした場合、確実に叩かれる。できれば裁判沙汰が起きてる中でそういうのは避けたい。


 どうすれば良いか、その時に仕方ないと呟く一人の女性スタッフがいた。


「こうなれば状況を利用するしかないわ」


「石動さん?」


「どうするつもりですか?」


「優奈と関係を深めたい兎さん、キーマンとなるNPCが集まる町、帝国が引き起こす空の封印破壊。それらすべてをくっつけるしかない」


「そ、それは?」


 その時、悪魔のような提案を聞き、全員が頭を痛めた。それは知られれば間違いなく運営は叩かれる内容であった。


「そ、それは確かに兎さんが参加するしかないですが、一点集中しすぎではないですか?」


「確かに、もうすでに兎さんが中心にイベントが起きすぎている。いまさらな話かもしれないが、これ以上避けたい事態」


 だがやるしかない。イベント期間、フラグ回収は別ユーザーが進めている。


 ならば起こすしかないのだ。石動スタッフは責任は私が持とうと言って、メールを出す。


 ただお願いしますと頭を下げる。そう神里怜司連絡する。


 ついでに彼が関わるように、イベントを大きく、魔王城にも被害が出るほどの規模に変えて、イベントを作り出すスタッフ達であった。


 ちなみに何人か胃薬を手放せない事態になり、営業マンの父親だけ蚊帳の外である。


「優奈に知られると叩かれそうだから、このことは内緒っと」


 だからどうか叩かないでね。そう全員が思うのであった。

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