運営側5

 GМルームでいまのワールドクエストの攻略を見て居たロザリオとマリーは愕然としていた。


「えっ、えっ? なにがどうなったの?」


 スタッフ達が慌てて動く様子を遠巻きで見ながら、マリーの説明でほぼ一撃でボスが撃墜されたと話されて困惑する。


「たぶん宝石魔法の【煌めく反射】の所為だね。この魔法は【反射】の上位版で、何度も魔法を反射できる防壁なんだよ。内側で反射し合って、高威力の魔法ダメを何度も起こしたんだと思う」


「それってまずくない?」


「たぶん、修正入るレベルだよ。いまスタッフの人達の怒声はそれが原因」


 うわぁと思うロザリオ。シナリオ作っていた人が、このイベントでロザリオの力解放させると息巻いていたのに覚醒する前に倒された。


 ここまでするのかと思いながら、どこかホッとするロザリオ。島が壊される心配が無くなりマリーも安心する。


「このくらいなら他の開拓地とかも被害を抑えられただろうね。私の商会も無事だし、これで好きに広げられるわ♪」


 少し壊れたりしているところはあるだろうが修復可能。売りこみして範囲を広げようとしている。


 ロザリオは時計兎さんの所で平和に過ごそうと思う。それにはにかむロザリオ。


「そろそろ向こうでロザリオと合流しようかしら?男と仲良くし過ぎで心配」


 そう小さな声が呟く。


「えっ、なんか言った?」


「なんでもないよー」


 そんな和気あいあいと話し合う中、スタッフ達は………


 ◇◆◇◆◇


「お、俺達のベヒーモスが……」


「【反射】の所為で消し飛んだ………」


 屍になったスタッフ。なぜこうなったかと言えば、最終兵器として用意していた大砲が序盤で見つかり使用、魔法ダメだから魔法反射する魔法壁で乱反射して中にいたボス撃墜。


 結果、長いイベントになるはずのボス戦が一日で終わった。全員が魂が抜けた状態になり頭を痛める。


「すぐに【反射】系魔法の仕様を変更するぞっ!!同じ手を使わせるな!!」


「大砲系の方どうしますか? このままにしておくと使い回されますよ?」


「だからって弱体化できるか、大型系対アイテムだぞ!!それこそバランス壊す!!どうすりゃいいんだ!!」


「あまり壊せなかったっていうか、全く壊せなかった………」


「あ、あの~」


 おずおずとみんなが見ないふりしているので、一人のスタッフがはっきり言うことにした。


「ベヒーモスの欠片。どうします? 全部海に落ちてますから、各大陸で発掘されるのもおかしいですよね?」


「終わった!! オリハルコン製作ルート終わった!!」


 口を開いて呆然とする主任。頭の痛い話しか無く、だからと言って、誰が悪いと言えば誰も悪くない事態………いや、時計兎さんが悪いか。


「ともかく、オリハルコンルートは海と関わらせて考えるしかないな。あとは白薔薇のデータどうなってる? 高性能なのは決まっていたがレベル高くないか?」


「AI学習機能を見る限り、兎さんのところでだいぶ性能が上がってますね。スキル組み合わせも高レベルアタッカーとして高い数値です」


「AIのデータ以外、攻撃力極振り戦士って感じか。次にコボルト達だが、なんであんなに強い?」


「魔術師はマーリン筆頭に環境が整っている為、スキルが上がりやすくなってます。魔鉱石もたくさん手に入れてますからね、鍛冶師など生産も低くて6レベです。NPCの中ではトップクラスに入りますね」


「おかしいな、臆病な種族設定なのに覚悟ガンギマリし過ぎて、決死兵士となってボス戦をこなすとは思わなかったぞ」


「それの所為で予想したリボルバー式を跳び越えて決戦兵器作りましたからね。しかも試作機を作るほど。さすがに二度目や次のワールドクエ戦闘などで魔鉱石製品の兵器は出てこないですね。ストレージ見ましたけど、もう魔鉱石はありません」


「少なくても兎さんが独占していた魔鉱石は出し尽くしたか」


「ですね。さすがに次は無いです」


 ため息を吐き、これからどうするか考える。


「とりあえずシナリオチームに丸投げするか。彼奴らもダメージでかいだろうが」


「ロザリオの力見せる気まんまんでしたからね。ダメージ無いのはPV作るチームですね。コボルトの活躍とか、話題性高そうですもん」


「だな。映像は山ほど手に入った」


「次のイベントどうします? 魔導人形達をどこに配置しますか?」


「こうなれば白薔薇経由で兎さんに渡しても良い気がするが、贔屓になるか? 無難なのは人魚島だな」


「それがいいと思います」


 あーだこーだと話し合いながら、これからどうするか頭を痛める。次のイベントに備えて、もういっそのこと兎さんを巻き込むかと言う話も出ている。


 とりあえずいまはお疲れ様と言って休む事にしたのであった。

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