第15話・細かく指示するのも大事なこと

 ホームに戻り、居間で話し合いをする一同。白薔薇は二階の空き部屋に住まわせる事にした。


「とりあえずクリムゾンコンドルは、両手持ちの斧を作り、レベルを上げて挑む方向だな」


「それでは、開拓は森に挑むのですね」


「ああ、バンダナ達もそのつもりで」


「わんっ」


 尻尾を振るバンダナに、ロザリオは微笑みながら白薔薇はお任せをと言う。とりあえず鉄鉱石の数も数だから、揃えるまでに時間がかかる。


「そう言えば兎さん、魔鉱石の係から、こんな報告が」


「なに?」


「は、はひいぃぃ、申し訳ありませんっ」


 頭を下げて、目の前になにかのインゴットを置く。これは?


『鋼のインゴット(魔鉱石×鉄鉱石)』


 魔鉱石と鉄鉱石のインゴット。


【ミスタースミス】「新素材ッ!?」

【侍ハート】「マジで!?」


 新素材にコメント欄が騒ぐ中、どうもこのインゴットは魔鉱石と鉄鉱石を入れて作り出されたらしい。怒られると思っているようだがでかしたとわしわししておこう。


「少なくても数の少ない魔鉱石を運用するのにぴったりだ。最も品質の良い『鋼のインゴット(魔鉱石×鉄鉱石)』を作り出して、それを武器にするんだ」


「分かりました。鍛冶師コボルト、ご指名、頑張るであります」


 敬礼する鍛冶師コボルト達。建物が安定すれば、コボルト達は集落に移動する予定だ。まだいる母親コボルトなどは居間でのびのび、オーブと共に遊んでいる。


「時計兎さん、オーブちゃんが宝石を出しました」


「それは回収しておこう。ありがとな」


 これでアクセサリーを作り、限界まで装備すれば勝てるだろうか?


 そう話し合いをしながら、白薔薇は俺が持ってきたそれを見る。


「主、これは?」


「あっ、クリムゾンコンドルから逃げる時に手に入れたアイテムだ。鉱石かな?」


 鑑定をしてみるとレベルが上がり、それは『モンスターの卵』と出た。ん?


『新しい子供ね、私が面倒見るわ』


 そう言う風にひゅるりと現れたミケ。卵らしきそれに覆いかぶさり、温め出す。


 ここにいる全員やコメント欄で聞いたが、モンスターの卵なんてレアアイテムは見たことないらしい。


「コボルト、この卵を孵化させるにはどうすればいい?」


「ミケさんがいるのですから、温めて居れば孵化するはずですよ」


 お母さんコボルトはそう言っている。確信は無いが不安そうな事は無さそうなので、普通に温めることにする。


 ロザリオが卵を温める為に布を持ちだして温める中で、今後の方針を決めてログアウトする。


 ◇◆◇◆◇


 ログインして視聴者達に挨拶して、庭先を見る。農業のレベルが上がり、色々と使えるようになる。


「桃うまいな、苗樹として増やせるかな」


【カツ丼】「店に売っていないのならできますよ~」

【ナイト】「連邦の方で作られてますね。野生の物も見つかって、ファーマ―が育ててます」


「そうですか、ならできる限り増やして、集落でも育ててもらうか」


 ホームに泊まるコボルト達に指示して、回収した物のいくつかを集落で育てるように増やす。ゴブリンや前に使っていた頃よりも広く開拓している為に、土地は余っているようなのだ。有効に使おう。


「あっ、おはよう~」


「おはよう」


 卵を抱っこ紐しているロザリオ。その中にミケも居て卵を温めている。


 コメントから新婚さんみたいとか言われてる。そんな展開は無いです。


 コボルト達も勘違いしている者が現れたが、本人は気にしていないと、この子のお母さんだからと言って気にしていない。違うそうじゃない。


「とりあえず、ロザリオはここで待機。白薔薇とバンダナ以下数名は俺と共に森に出向く」


「はい分かりました」


「俺のいない間は、作物を増やしておいて、回収した薬草を半分をポーションに。来たるべきクリムゾンコンドル戦に備えて、リジェネポーションと言うのも作ろう。作り方を見せるから、材料はこれで」


 笹の葉と薬草、綺麗な水で作り方を見せる。ネットで流れている作り方を見せているだけだが、目を輝かせるコボルト達。


「材料が不足した時の為に、森林見回り隊に回収を頼む」


「わん」


 俺がいない間でも、解放したエリアを見回りするコボルトがいる。だいぶ強くなったおかげで、俺が居なくても行動できるコボルトは多く居る。


 鉄鉱石を採取して、魔鉱石と合わせて『鋼のインゴット(魔鉱石×鉄鉱石)』を生産するように指示。性能の良いのでバンダナの短剣など作るようにも言っておく。


「作る際は別のインゴットで試作品を作ってからにしろよ」


「はいです」


【ナイト】「指示ちゃんと聞いてくれる……凄い」

【カツ丼】「あれ?俺らんとこも細かく指示聞いてくれるよ」

【ハカセ】「調べたところ、好感度によっては指示を聞いてくれないようですよ」


 となると、コボルト達の集落発展も視野に入れながら行動した方が良いな。


 彼らの所で生産物ができれば助かるし、そうして指示を出した後は、森の探索に出かけるのであった。


「いってらっしゃい」


「行ってきます」


「わわーんっ」


 ロザリオと別れて、島を一直線で進み、北エリアに広がる樹海へと入る。

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