第5話・ゆっくり進める
翌日のログインをする際に当たって、ベイビーカーバンクルの情報を調べた。
手の者と言うか、考察ギルドや『幻獣愛好家クラブ』と言うモンスター好きが集まるゲーム。明らかに関係者っぽい人がコメントしていたので調べたが、なにも出てこない。
唯一分かったのはベイビーカーバンクルはすでに『幻獣愛好家クラブ』に見つかり、俺の場所探しが始まった事のみだ。こりゃ、人を招くと実況動画並みになるぞ。
そう思いながらも、設定は変えずにログインした。
設定を変えないのは、少しばかり『幻獣愛好家クラブ』の人達に負い目があるからだ。
前のギルドの時に謝りに行った者達は許されたが、NPCからもう狩るのはやめてくれと懇願されてもレアドロップ目当てでメロディーバードと言うモンスターを狩り、帝国領内で自然に生きるメロディーバードは絶滅させたことがあった。
突然、NPCから警告が出た時点でやめておいた常識派な俺達と、知るかと言って、むしろ喜々として狩ったバカ達。謝りに行かず、俺達は針に突かれるように大勢の前で頭を下げた。
『………貴方達は許します』
そう顔を歪めながら、こちらの事情を知っている彼女は言った。
『ですが謝りに来ない奴らは許さない』
『………はい』
そうとしか言えず、迷惑なギルドはプレイヤーから嫌われたギルドへと変わったのであった。
そんな事もあり、できる限り彼女達の要望は聞いてあげたい。直接聞いたりはしないし、場所も言わないが。来られたり、関わる事があった際は受け入れる気でいる。配信もその一環だと思っている。
一応一定の人気、視聴者がいるプレイヤーは配信設定できるから、それまではそのままにする。配信設定できる時は、投げ銭が発生するから、きちんとするつもりだ。
そして俺はゲームの中で目を覚ます。ゲーム内では初心者セット以外置く物が無い為、いまで寝ている俺が起きると、オーブはずっとミケに甘えていた。ミケもせっせと子育てしていて助かる。
【ライト】「こんにちは」
【レフト】「こんにちは」
「早いな」
この二人が手の者っぽいんだよな。左右と言う名前だが女の子の声だし、あのギルド女の子、特に学生が多いからな。時間帯も合うだろう。
名前と面倒を見る以外、ほぼなにもしなかったからな。鑑定を使い、ベイビーカーバンクルのスキルなどを見る。
『ベイビーカーバンクル』
生きる宝石と言われる幻獣であり、大陸では滅びたとされる動物。希少な宝石を生み出す事ができて、生体が作る宝石は希少である。
【幸運】【宝石作成(幼)】
やばくない?
【カツ丼】「やばないこれ」
【ハカセ】「これは絶滅種か」
【ライト】「マジで」
宝石、特に装飾品として出回っているそれは、高性能のアクセサリーとして有名だ。
値段はもちろん高く、細工されたそれはスキルのレベルを上げたり、魔力自然回復量を増やしたりする。
最終日近く、これを手に入れたとある自然魔法使いはスキル9レベになり、高威力の【火球】を放つ。ちなみに【火球】は自然魔法初心者が次に覚えられる魔法。ギルドの資料室を借りられれば覚えられる簡単なものだ。
そんな宝石を作れるとなると、ドロップしそうだから、狩り尽されたんだろうな。
「お前も苦労したんだな」
ずっとミケにベロベロされて泣き止んでいるオーブ。いまは傍にいてやろう。
調合のレベルを上げる為にポーションを作るか。
「薬草と魔力草を採取して、調合するか。薬草なら良いのできると思います」
畑から薬草と魔力草が六つ手に入り、品質はこの際は無視して、三つ株分けのアーツを使い、種を二つ三つ作る。それを植えて育てるを繰り返すのだ。魔力草はいまのLvでは失敗する可能性が高いから全部種にしよう。
『農業スキルが上がりました 1>2』
【ミント】「おめー」
動物達も外に出して運動させる。逃げないが、気を付けないといけないのは変わらない。
ジャガイモも同じで、イモモと言う名前のそれを回収。海水から後で塩を作れるか試して、塩ゆでにしよう。
【疾風】「調合1ですか?調合セットがあるなら下級ポーションは70%ですね」
【カツ丼】「マナポは作るん?」
【ビビンバ】「マナポは30%やね成功率」
「おっ、もう%出てるんですか? 攻略サイトは逐一見てないんで助かります」
【疾風】「いえいえ」
【カツ丼】「代わりにまた可愛いをください」
【テッキ】「愛好家以外にもあの動画人気ありますんで」
「はーい」
オーブを抱っこして、カメラワークに見せる。つぶらな瞳がキュートらしく、それでいいらしい。
確か、下級ポーションは薬草2個、綺麗な水でできて、能力は品質で変わるんだっけか。煮詰めて冷やしたりする過程でも回復量変わるらしい。
初心者用の安定ポーションの作り方は、確か薬草を二個ずつ増やして一つ増えるやり方か。すり鉢ですり潰して煮詰めて冷やすだったな。水は魔法で出そう。
【テッキ】「生産職ギルドの安定した作り方ですね」
【疾風】「さすがに普通ですね」
【ユウ】「ベイビーカーバンクルが居ればそれでオッケー」
「動画配信者じゃないんでね、すまないね」
俺の周りにいるベイビーカーバンクルを見ててくれ。
縁側でゴリゴリすり潰していると、すぴすぴと鼻を鳴らしながら覗き込む。これやめなさい。
【レフト】「可愛いが来たーーーー」
【ユウ】「幼体だから食べないと思うけど、すり潰したのはいけるのかな?」
「どうだろう?食べるか?」
そう思ってたらクションとくしゃみした。これポーションの中にするんでないわい。
【レフト】「言い値で買おう」
【ミント】「言い値で買います」
【ユウ】「オーブちゃんのくちゃみ入りポーション……」
手の者が多い。
………
……
…
それで完成したポーションは三つ。下級ポーションと言う回復手段を手に入れた。
『調合スキルが上がりました 1>2』
すやすやと眠るオーブを見ながら、ポーションをストレージに仕舞い、次に森の探索に出向くか、鉱山に出向くか。
「まだ連れていくのは早いよな」
【ライト】「早いですね、さすがに」
【ユウ】「スキルに戦闘系が無いですから、早いです」
【ビビンバ】「と言うことは」
【テッキ】「グッバイかわいい」
話が早くて助かる。動物達を小屋に戻して、俺は鉱山へと向かう事にした。
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