第4話・幸運を拾う

 運が向いて来た。


「大当たりじゃねえ?」


【ハカセ】「ですね」

【ビビンバ】「すっげぇー鉱床じゃんっ」

【三郎】「奥になんか設備あるよっ」


 コメントの方もざわついてる。中は通路になって、広々とした坑道の入り口が広がっていた。


 灯りは光苔と言う植物が群生していて、いくつか採取しておいた。その光苔があるおかげで中は明るく、広々としている。


 セーフエリアらしい場所で、無数の奥へと進む通路がある。その一部の鉱山の洞窟は、鉄鉱石が掘れるセーフエリア。モンスターの襲撃を警戒せずに発掘ポイントが山ほどある。ここは俗に言う当たり山らしい。


 発掘を取り、早速レベルが上がるまで発掘した。ツルハシあるし、こんな時の為に買ってよかった。打撃系しか効きづらい奴の頭を叩き割る用に買ったのにね。


 さらに奥の方に、なにやら古代時代に作られた設備がある。


『太古の魔導高炉』


 鉱石を入れて、インゴットにする炉。魔力を魔石に込める。


 これが五つ、作業台らしい場所とセットで鍜治場ができた。コメント欄も大騒ぎ。


「10個の鉄鉱石を入れて、魔力を流して………」


 鑑定してみると『太古の魔導高炉:稼働中 29:57』となっている。インゴットになるのは30分らしいな。


「ラッキーだが、セーフエリア外の通路は、トロッコでも使用してたのか、古い時代のもんがあるな」


【カツ丼】「ここまできたら奥まで見て欲しい」

【ハカセ】「気になりますね」


「だよね~やばかったらすぐに逃げますよ~」


 こうして俺は鉱山の奥へと入りこむ。




 ………

 ……

 …




 トロッコの道は途中で途切れて、アリの巣のように分かれ道が多い。


 石を積み、帰り道の道印を作りながら奥へと進む。


「そろそろ帰るか」


【レフト】「なにもなかったですね」

【ライト】「発掘ポイントもなかなかない」


「廃坑なんだろうか?いやけど、少ないけどポイントはあったし、セーフエリアのはたくさんあったし、これなら安全なとこで発掘スキル取って、発掘してればよかった」


 そのSPは残していたのに、くそ。


 そう思っていた時だ。


「ミャーーーー」


 猫のような泣き声が響き渡り、地面が揺れた。


「なん」


 その時、俺は勘で動いた。


 何かが飛来してくる。拾う。その場から即座に離れる。


 その瞬間、立っていたところの下から何か巨大なモンスターが現れ、天井を突き破る。


【ライト】「はい?」

【カツ丼】「急・展・開」

【三郎】「なんか持ってるけどなに?」


「知らんし逃げるッ」


 蛇の叫び声が聞こえる中、やばいものが迫る中で俺は走り出した。


 ◇◆◇◆◇


 迫りくる何かから逃げる。ずっと追いかけてきたが、入口付近になると急に気配が消えた。セーフエリアまで逃げて、一息をつく。ここまでくれれば大丈夫だ。


「急いで逃げたから鑑定もできなかったけど、後ろ見てどうでした?」


【レフト】「巨大な蛇かミミズっ!!」

【ライト】「逃げて正解ですね」

【ハカセ】「ネームドモンスターかエリアボスか、どちらにしても正解ですね」


 ネームドモンスターは名前付きのモンスターでかなり強く、エリアを点々と移動する。エリアボスはその名の通り、一定の範囲内を徘徊する強いボス。こいつやボスを倒すとセーフエリアが増えたりする。


 どちらもレイドの時に倒したが、ほとんど終盤だからいまのレベル、しかもソロでは無理な話だ。


「後は……これなに?」


 色とりどりの宝石を背中から生やして、震えているアルマジロっぽいなにか。ネズミ?ハリネズミっぽいと言えばっぽい。


 さっきから震えて居て、俺にしがみ付く。怖かったのだろうか、赤ん坊のようによしよしとあやす。


【レフト】「その子怪我してます」


「ん、なら治療なら笹と薬草があるな」


 前足に傷があり、薬草と笹の葉で包帯のように巻く。応急手当が成功したとウインドウが出て、少し安心する。


「みゃー」


 寂しそうに鳴いては俺に張り付くそのモンスター。よく見ると緑マーカーだ。赤が敵で、白はノーアクティブ、青はNPCや味方である。緑はテイム可能モンスターの証だ。


「よしテイムしよう」


『調教のレベルが上がりました 2>4』


「二段階?」


 名前はベイビーカーバンクル。幼体となっている。


 モンスターの幼体は赤ちゃんで、ミルクしか飲まないし、親はいるはずなのだが、あの場には蛇っぽいなにかしかいなかった。


 食われたかはぐれたか、少なくてもあの先に進まないといけないが、俺もこいつも、戻るほどの技量は無い。


 それが分かるのか、さっきから泣いてばかりいるベイビーカーバンクルを持って、俺はホームへと舞い戻る。


 とりあえずミルクはあるから大丈夫。こいつを保護して、鉄鉱石や鍛治は後々取るかと決めるのであった。

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