第56話
俺は泣きそうになるのを堪えて、アルファムを見上げると何度も頷いた。
アルファムが俺の大好きな太陽のような眩しい笑顔になる。
「アル…ありがとう。俺はアルの傍にいられたらそれでいいんだ。だから俺を離さないで欲しい…」
「ああ、二度と離さない。おまえを狙う奴らがいるからな。俺がしっかりと守ってやる」
「狙うやつ?え…いるかなぁ…」
「いる。今度、そ奴らがこの城へ来る」
「えっ」
俺は大きく目を見開いてアルファムを見た。
「俺の即位五周年の式典に招待しなければならない。この世界のエン国、スイ国、ウィン国、マウン国、ディエス国、ルナ国の王族が、この城に集まるぞ」
「へぇっ、すごい!あ、じゃあレオンも来るかなぁ」
「レオン?」
「ほら、この前の。水の国の王様のレオナルトだよ」
アルファムの太陽のような笑顔が一転、鬼のような形相になった。
「ア…アル?なんか、顔…怖いよ?」
「あいつ…俺はあいつには会いたくないぞ。カナを二度も連れ去ろうとしたあげく、カナに親しげに名前を呼ばせやがって…!」
「だ、だって、助けてもらったし…優しかったよ?」
「ぐっ…ぅ。わかっ…た…。カナがそう言うなら…仕方がないが…っ」
俺は腕を上げて、アルファムの顔を両手で挟み、ふふ…と笑う。
「アル、ありがとう。ホントはすっごく怒りたいのを我慢してくれてるんだね。また一方的に怒って俺を傷つけないようにって。でも、ちょっとくらいなら怒ってもいいよ。だって…それって、俺を好きだからだろ?嫉妬してくれてるから」
「…そうだ。カナには俺以外を見て欲しくない。話して欲しくない。触れて欲しくない。でもそれを押しつけることはしたくないからな。カナが話したいなら少しくらいは…許す」
「…相変わらず偉そうだけど…でも、ありがとう」
アルファムが少しずつ変わってきてるような気がする。俺と出会った頃は、こっちの意見を聞く気なんてなくて、自分の思い通りにすることが当たり前だったのに。
そんな傲慢なアルファムを俺は好きになったんだけど、今の思いやりのあるアルファムはもっと好きだ。
俺がジーッとアルファムを見つめていると、端正な顔が近づいてキスをされた。
「んっ…コホッ、私は出て行った方がよろしいですか…?」
「え?」
慌てて声がした方を振り返ると、シアンが困った顔で立ち上がろうとしていた。
「あ…ご、こめんっ。仕事続けていいよっ?」
「いや、シアン、今日はもう終えていいぞ」
「ではアルファム様のお言葉に甘えて失礼します。あ、その式典のことですが、他国の来賓の中に、アルファム様やカナデ様を傷つけたウィン国の王子も来られるかもしれません。くれぐれもお気をつけて」
「…バルテル王子が…」
一礼をしてシアンが出て行った扉を、俺は不安げに見つめる。
アルファムが、そんな俺の頭を撫でて「大丈夫だ」と囁いた。
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