第22話 スタンピード発生

ある日いつもの様にギルドに来ていた。


「マリーさん、おはようございます」

「おはようございます! マジェスツのお2人は今日はなんの依頼にしますか?」

「んーどうしようかなぁ」


カァーンカァーンカァーン


「大変! 緊急事態だわ! 冒険者の皆さんは集まってください! 緊急依頼です!」


――


ガヤガヤガヤ


「皆さん! 先程南の方角に魔物の群れ。スタンピードが発生したと報告がありました。群れの大半はウルフ系です! とにかく素早いので、王都に侵入されないようにしてください! そしてデプトホープとマジェスツの皆さんは今現在の王都の最高戦力です! 全力で殲滅してください! 特にジンさん!」

「はい!」

「ギルドマスターから街道や森の破壊が認められました為、全力で対処してもらっていいですか?」

「わかりました!」

「では、皆さん! マジェスツを筆頭にスタンピードからの王都防衛をお願いします!」

「「「「おう!!」」」」


ギルドから次々冒険者が出ていく。

マリーがジンとメルに声をかける。


「ジンさん、メルさん、絶対に生き残って帰ってきてくださいね!」

「大丈夫だよ。問題ない」

「わかったよ! 殲滅してくるね!」


ギルドを後にするマジェスツ。

南の草原の広いところで向かい打つことにした。


冒険者たちが、ゾクゾクとあつまる。


先頭にはジンとメルのマジェスツ。

その後ろにデプトホープが控えている。


遠くを見ると前方の草原が黒で埋め尽くされている。


「メル、各自デカイのを1発お見舞いしよう!」

「オッケー!」


「よし! 今だ!」


ブブブブブンッ


大きな5連の光の直列魔法陣が並ぶ。


「セイクリッドスフィア!」


キラキラキラキラ


光が魔物達の頭上に集まりだし、球体を作っていき、そのまま地面に落ちていく。


ドォォォォォン


魔法の下敷きになった魔物は全て灰になった。

しかし、まだまだいる。


「よーし! 次は私が!」


ブブブブブンッ


大きな5連の炎の直列魔法陣が現れる。


「イフリートハンマー!」


ゴゴゴゴゴ


炎の腕が現れ、地面に叩きつけられる。


ドガァァァァァン


腕の下敷きになった魔物も全て灰になった。


後ろではこの光景を見ていた冒険者達はあ然としていた。

これが、マジェスツの本気なんだと。

この天変地異みたいな事をやってのけるこの子らが味方でよかったと。

誰もが思っていた。


「よーっし! 来るよー!」


メルの掛け声にハッとなる冒険者達。


「行くぞぉぉぉぉ!」


「「「「おぉぉぉぉ!」」」」


ザックが先頭に立ち、魔物達に向かっていく。


接敵し、魔物の前進が止まる。

それが狙いだったジンとメル。

すぐさま魔法を発動させる。


「バーニングストーム」

「ボルケーノストーム」


ゴォォォォォォ


凄まじい熱気が当たりをつつみ、魔法の効果範囲の外の魔物も発生した上昇気流により、空に打ち上げられる。


これで、半分は消えたのでは無いだろうか。

そう思った頃、奥から巨大な魔物が現れた。


「おい! あれはサイクロプスじゃねぇか!?」

「あの数はマズイぞ!」


そう、奥から来たのは5体のサイクロプスであった。


ズゥゥン ズゥゥン

と進んでくる


味方であろう魔物も関係なしに前進してくる。


ザックが大声で聞いてくる。


「ジン! どうにかできるか!?」

「大丈夫! 俺が片付ける!」

「本当か!?」

「やってみせる!」


両手をサイクロプスへかざすジン。


ブーン


一体のサイクロプスの頭上に大きな魔法陣が現れた。


ブーン


さっきの魔法陣からもう一体の頭上にも魔法陣がスライドして現れる。

もう一体、もう一体と魔法陣が現れていく。


「くっ! 最後だぁ!」


最後の一体の頭上にも魔法陣が現れる。

すると、ジンの身体に変化が現れる。


ツーーッ


鼻から鼻血が流れ出てくる。


「高度な魔法陣を並列で出したから、ジンの身体が悲鳴を上げてるわ!」


メルが叫び声をあげる。

ザックがジンを振り返ると、鼻血を流しているのを見て叫ぶ。


「おい! 無理するな! 皆で倒せば良いんだ!」

「大丈夫! ちょっと頭が熱いだけだ!」


ジンは魔法陣をなんとか維持している。


「はぁはぁはぁ行くぞ!」


「タケミカヅチ」


ピカッ ズガァァァァァァン


極太のイナズマがサイクロプスを貫く。


プスプスッ


煙を上げながら倒れる。


ズズゥゥゥン


そして、五体は灰になっていった。


「すげぇ」

「これがジンの本気……」

「ハハハッ! さすがジン!」


皆が賞賛しながら戦う中、ジンは膝を着いて休んでいた。


「ふぅ。頭が割れるかと思ったぁ。ちょっとクールダウンしよう」


ジンが他の冒険者達の戦いを見ている。

皆それぞれの武器で、それぞれの戦い方で魔物を倒していく。

もちろん魔法士もいる為、魔法での攻撃も飛んでいる。


サイクロプスが倒れたことで、残りはウルフ系のみになっていた。

素早いため、なかなか攻撃が当たらないようである。


前線の方に向かうジン。


「もう大丈夫なのか!?」

「軽い魔法なら大丈夫」


そういうとおもむろに手をかざし


ブンッ


「ショックウェーブ」


バチバチバチバチッ


放射状に雷が走る。

動きの鈍ったウルフ達を仕留める冒険者達。


「感謝する!」

「ありがとうよ!」


口々に礼を言う仲間達。


戦い始めて数時間経ちようやく魔物が少なくなってきた。


「残りは俺がやろう」


そう言うと球体上の魔法陣を出し、索敵しながらホーリーアローを放っていく。


追尾するその魔法が次々に魔物を倒していき、やがて魔物は居なくなった。


「よし! 終わり!」


その瞬間


ワァァァァァァ


周りの冒険者らが歓声を上げる。

口々に称えあっているようである。


「ジン、お前のおかげで俺達は王都を守れたぜ!」

「みんなで頑張ったからだよ」

「まぁ、そうなんだけど、サイクロプス5体は俺ではどうしようも無かった。それを一撃だ。皆でそれを証言してAランクに上げて貰えるように進言するつもりだ!」


そう宣言するザックに周りの冒険者達も同調する。


「そうだぞ! ジン達はAランクが相応しい!」

「うん! 上に立ってくれ!」

「マジェスツは最強だ!」


その声を聞いて笑顔になるジンとメル。


「ありがとう」

「みんな! ありがとー!」


こうして、スタンピードは王都の冒険者達で阻止された。


――


皆で王都に戻ると


ギルドまでの道すがら、街のみんなにお礼を言われたり、お疲れ様と食べ物や飲み物をくれたり。

街総出で冒険者達を労ってくれていた。


冒険者達はみな思ったのだ。

命を懸けて魔物達と戦って良かったと。

自分達はこの人達の命を、笑顔を守ったのだと。

みな誇らしい顔でギルドに戻った。


ギルドに入ると


「「みなさん! お疲れ様でした!」」

「ありがとう!」

「さすが冒険者達だ!」

「この街は安心ね!」


口々に称える声を上げる。


「マリーさん、ただいま戻りました」

「ただいまー!」


「お帰りなさい。よくぞご無事で戻られました! 私達はあなた達冒険者を誇りに思います!」


奥からギルドマスターのタリムがやってきた。


「冒険者諸君! よくぞこの街を守ってくれた! 本当に感謝する! 報酬は皆に支払うぞ!」


タリムが言うと、ザックが前に出てきた。


「その話だが、俺の報酬からジンとメルに半分渡してくれ!」


「おでも!」

「私のも!」

「あたいも!」


そう言って次々に名乗りを上げたのはデプトホープのメンバー達だった。


「今回のスタンピード、サイクロプスが5体も出てきた。それを全部ジンが倒した。それがなきゃ、俺達はここには存在しない」


「俺もだ!」「俺も!」「私だって!」


口々に冒険者達はジンを称える。


「待て! わかった! そんな事があったとはな……。 報酬は均等に払うが、ギルドマスターの権限で、ジンとメルをAランクとする。これを報酬とするが、どうだ?」


「えっ!? いいんですか?」

「試験とかないの?」


「君達の強さは十分に分かっているつもりだ。さっきの話もにわかには信じ難いが、皆が言うんだ、本当なんだろう」


皆が一様に頷く。


「であれば、Aランクこそが相応しい! 新しいAランクの誕生だ!!」


「「うぉぉぉぉぉぉ!!」」


「やったなジン!」

「メルちゃん良かったな!」

「さすがジンくんね!」


こうして新たに史上最年少のAランク冒険者が誕生したのだった。


この日は宴が開かれ、街のみんなで朝まで大騒ぎだったんだとか。

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