治療物

バブみ道日丿宮組

お題:箱の中のお嬢様 制限時間:15分


「掃除するから端っこの方にいてね」

「んー」

 するすると少女が転がってく。そして角のすみっコで体育座り。

 そこまでする必要はたぶんないだろうけどと、掃除機開始。

 冷房ガンガンで換気という概念がない部屋だけど、ホコリはさほどない。

 毎週3回身の回りの世話をしてるからというのもあるが、少女はあまりゴミを出さない。排泄という機能はあるようだが、人間ほどでない。

 というのも、少女はエナジードリンクで生きてるといってもいいくらいに、固形物を食べたがらないから。唯一口にしてるのはカロリーメイト。身体に悪い生活だ。だからこそ、大きい方はほぼでない。

 不健康そうに見えて、少女が病気になったところはお世話係になっても見たことはない。記録では160年前に発熱したというくらいで、目立ったものはない。

 むしろ昔は、エナジードリンクなんてものはなかったし、単純に本当に栄養が足りなかったかもしれない。

「採取するから、こっちきて」

「んー」

 少女が近づいてきて、腕を差し出す。

 献血用の容器とチューブ、注射器を用意して、少女に挿入。

 開始ボタンを押すと、血を回収はじめる。

「んー」

 少女はその様子をじっと見てる。

 少女と私たち人間は、依存関係。

 少女にご飯をあげて、少女に血をもらう。

 少女の血は万能薬で、あらゆる病をも破壊する。

 そのため、この国では治らない病気というのがない。もっとも一般的に使われることもないが。

 少女は秘匿された存在ではあるが、知られてないということはない。

 なんどか戦争が起こったこともある。

 そのたびに、なんと少女が相手国を滅ぼしてきた。

 少女が味方してくれる理由は未だ不明だ。

 この国にいったい何のメリットがあるのか、私も不思議に思う。

「今日はこれを買ってきたの」

 採血中に、袋から洋服を取り出す。

 黒いワンピース。

 金髪赤眼の少女に似合いそうだと、購入して持ってきたものだ。

「んー」

 それを片手に取ると、少女はんーを連呼する。

 どうやら気に入ったようだ。

「これが終わったら着てみようね」

「んー」

 少女は着替えることはできるが、基本誰かに着替えさせてもらってる。

 自分が特別だということを理解してるためなのか、あるいはお嬢様器質のようなものを持ってるからか。

 何にしても、少女は可愛いと思う。何を着せても輝く。

 少女のお世話係になれてよかったと思う。

 子どもはいつだって元気にいてほしいと思うから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

治療物 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る