リスト漏れの勇者、異世界の魔法学校で保健体育教諭になる

ふぃるめる

第1話 リスト漏れってマジですか?

 新卒の教諭が山間部いなかの学校に赴任したっていうのは、よくある話で俺もその例に漏れず山間の小さな高校に新卒の保健体育教諭として赴任することになった。

 教育実習で、教える側として立つ学校にはある程度慣れていたから、初日の勤務を無事に終えることが出来たその帰り道――――


 「あなたが必要なのです」


 トンネルに入った瞬間、美しい女性の声が脳裏に響く。


 「は?えっ?」


 おいおい……よりによってトンネル入ったタイミングとか、やめてくれよ……。

 

 「悪霊退散悪霊退散!南無阿弥陀仏!」


 咄嗟に出てくる効果があるのか分からない言葉を口にすると


 「私は悪霊なんかでは無いので退散はしませんよ?世界を救うためにはあなたが必要なんですっ!」

 「おいおいおい、取り憑かれちゃったのかこれ?」


 後部座席を振り返っても誰もいないし、窓ガラスやフロントガラスに手形があるわけでもない。


 「あぁぁ、もう焦れったいのですっ!【召喚サモン】!」


 誰のとも知れぬ声がそう叫ぶと、突如白い光に包まれた。

 何この対向車からハイビーム当てられたみたいな光は!?

 

 「眩しいっ!」


 元いた世界最後の記憶は、思いっきりブレーキを踏んだところで途切れた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 「えっと……大変申し上げにくいんですが、勇者リストに貴方の名前が乗ってないんですよ……」


 俺を召喚した本人である自称女神が申し訳なさそうに言った。


 「はい?今なんて?」

 「いや、ですから貴方は五人召喚された勇者の一人のはずなんですけど、リストにあるのが四人なんです。なので勇者になれないというか、何がどうなってるのか私にも分からなくて……」


 そう言って何度も勇者の名前が書かれたリストを見返す自称女神。


 「なら、俺帰れるの?」


 そう新卒教諭として赴任したばっかりの俺は、これからが社会人としての大事なスタートなのだ。

 戻れるなら今すぐにでも戻りたい。

 三十人を預かる副担任だし。


 「それもなんというか……う〜ん、魔法技術的に難しくて……それにこれを見てください」


 ペコペコ頭を下げながら自称女神は、二人の間に映像を映し出した。


 『昨日午後八時頃、県道237号線秋葉坂トンネル内で起きた乗用車二台による衝突事故で―――』


 映像は、間違いなく俺の県の地元テレビ局によるニュースだ。

 しかも驚くことに車と衝突して相手に軽傷を負わせたと報道されてるし……。

 これ、過失運転致死傷罪とかに問われて教員生活出来なくなるやつじゃん……。


 「ということなんですよね……なので戻るのはおすすめ出来ないんですよ……」

 「あら、そう……」


 意気消沈して変なリアクションを返してしまうがそんなこと気に留める余裕もない。

 

 「マジかー教員生活一日で終了かぁー」

 「マジです」

 

 こうなったら異世界で生きていくことしか出来ないってことだよな……。


 「でも災難続きの貴方に朗報もあるんですよ?」

 

 そう言って俺の写真の貼られた紙のようなものを自称女神は取りだした。

 一体誰のせいで災難続きなんだろうなぁ?


 「これは?」

 「貴方のステータスです。この世界の言語に貴方の脳は適応させておいたので、読めるはずですよ?」


 自称女神は、ニコッと笑った。

 てか、いつの間に脳みそ弄られてんの?

 サイボーグにでもなってしまってるんだろうか……?

 そんなことを考えつつこの世界ののステータスを知るために紙へと目を落とす。


 ・クラス:勇者

 ・使用可能な魔法階梯:全部

 ・ランク:SS

 ・追記:創造魔法が使えます。


 ステータスとか言うから、物理防御Lvだったりとかスキルとかあんのか?と思ったけどそうでもないらしい。


 「これだとどれくらい凄いんですか?」

 「えっと、勇者レベルです」

 

 そりゃそうだろ……リスト漏れしたらしい勇者なんだから。

 もうちょい具体的な答えを頼むよ自称女神さん。

 

 「もう少しわかりやすく言うと?」

 「そうですねー。できない事の方が少ないです」


 はぁ……そういう答えじゃないんだよ求めてるのは。

 この自称女神に訊いた俺が馬鹿だったのかもしれん。

 まぁいいや、それだったら仕事を見つけるにも困らんだろう。


 「そうか……で、仕事はどこで見つけたらいい?」

 「ギルドに行けば仕事なんていくらでも見つかります。地図を書くので行ってみてください」


 そのまま魔法か何かでパッと書いた地図を受け取ると


 「本当に迷惑かけちゃってすみません!お達者で!」


 と自称女神に見送られながら、天界からギルドのある街へと転送されるのだった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


息抜きに書いてみました。

連載するかは反応次第かと思います。

一応のプロットはありますので、ゆっくり形にしてこうかなと。

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