第11話 やっぱりもめるのですね

 怜音くんが迎えに来てくれ、それからわたしたちは四人でSHAKEの部屋へ帰った。


「たっだいまー!」

「お帰りー! みつけたんだね!」

「まぁ、そりゃあね」


 怜音くんとニコニコの琥珀くんが会話をしているうちに、私の後ろにいたはずの楓くんと俊くんはお互いに邪悪な笑みを浮かべていた。


 ま、まさか……


「え、え、どうしたの、楓~俊~?」

「ふふ、決着をつけるときが来たようだな」

「受けて立ってあげる」

「「負けねえ!(ない!)」」


 そのまさかだったー‼


「「「は?」」」


 ポカーンとふたりを見つめる怜音くん、琥珀くん、真宙くん。



 そりゃそうだよね、そうなりますよね!


「じゃあ多数決とろうぜ!」

「よろしい!」


 楓くんがホワイトボードになにか書き始めたすきに、わたしは三人に説明を始める。


「ええっとですね、今日の見回りの最初、メアーズヘビを略すなら? ってなって、それで、楓くんが、メビっていったんです」

「「「ぶっ!」」」

「そして、俊くんが、アへって……」

「「「ぶぅっ‼」」」

「あのぅ、どうしましたか……?」


 ついに「あはははっ!」と笑い始めた三人に私が問いかけると、真宙くんが「いやぁ、面白すぎてさ」という。


 そっかぁ、納得! わたしもメビとアへはおもっ、ふふっ、ダメだ、笑いが。


 楓くんがパンパンと手をたたきながら部屋を一周する。


「は~い、静粛に~? ほい多数決! いいほうに手あげてね~! おれたちも参加するから!」


 笑っていた三人は静かにいすに座るので、わたしもいすにすわる。


「はい、目を閉じて」


 楓くんが言った瞬間に、SHAKEは全員目を閉じた。


 よし、今のすきに……!


「まず、メビがいいと思う人ー」


 楓くんは手を挙げてると思う。


「次、アへがいいと思う人ー」


 少し笑いが聞こえる。


「はい、オーケー。目を開けて」


 私は即座にいすに座ってみんなと同じように目をとじてたふりをして、目をあける。


「楓くん、今ので分かったの? 見えないのに?」

「うん、なんとなくだけどちゃんとわかるよ。じゃあホワイトボードに……って、え?」


 ホワイトボードを見たSHAKEは目をまるくする。


 よし、計画通り!


 何をしたかって? それはね……


 ホワイトボードに新たにわたしが提案した「メアヘビ」を追加して、そこに楓くん俊くん以外の人たちの票を入れたの! もちろん、私の票もね。


「えっとー、芽衣ちゃん?」

「何ですか?」

「これ、芽衣ちゃんだよね?」

「何のことですかー? 私しりませーん」

「いや鶯だろ」

「やってないって言ってるじゃあないですか」


 わたしはしらばっくれて、全力で否定。


 うん、もちろん嘘だけどね? わたしだけどね? 嘘はよくないんだけどね?


 めんどくさいんだもーん! なんだったら私のやつに入れればいいもーん!


「そうだよ! アへとかよりはマシだよ!」

「マシ、ですか……?」


 ここで琥珀くんに笑顔で圧力をかける。


「え、えっとー、アへとかよりは全然いい! 賛成!」

「ちぇー、つまんないのー」


 楓くんはすねた子供のようになり、俊くんは無言の圧力をかけてくる。


 わたしは両手をパンッととあわせて笑顔で話す。


「は~いメアヘビでいいってことなんでこの話終わりにしましょ! はい!」

「お前な~」

「わ~! 俊くんが怒った~!」

「おま、待てぇぇ!」


 わたしは笑いながら走って俊くんから逃げる。


 俊くんも走ってわたしを追いかける。


 俊くんは怖いけどわたし足速いんで⁉ 同級生の男子は多分いけますよ⁉


 そんなこんなで、その日も楽しんでから帰った。




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