第3話 痛みと衝撃

「痛てーよ、怪力ゴリラ!!」

澪に1発入れられた右頬を擦りながら俺は興奮そのままに喧嘩口調で話しかける。だがそんな俺に冷ややかな視線を向け、澪は1人スタスタと歩き出す。そんな澪の後を俺はまた追っていく。

俺が追いついても何も言ってこない澪に焦りを感じ、俺から話しかけてしまう。

「おいっ、おーい!何でなんも言わねーんだよ?いつもならめちゃくちゃキレんのに。」

俺の言葉に澪の体はビクッと反応し立ち止まる。そして俺の方に振り返り口を開いた。

「はぁー、なんでって呆れてなんも言えないからよ。それにキレたりしないから!」

「呆れるって何にだよ?意味わかんねぇ。それにその言い方はもうキレてるだろ・・・。」

「っ〜!!うるさいわね!

あんたの方こそ当て馬な事を受け入れてんじゃないわよ。」

図星だったようで顔を赤くするも、俺の事を口撃するのは止めるつもりはないようだ。

図星なのは俺も同じようだった。

(受け入れてるったって、仕方ねーだろ。今までもそうだったし・・・。)

澪の言葉が俺の心にグサッと刺さり、つい俯いてしまう。そんな俺を見た澪の声は先程の怒りを含んだものでは無く、優しく諭す様な声に変わっていた。

「はぁ、そんな顔しないでよ、私がイジメたみたいになるでしょ。ほらもう顔上げて、帰るわよ。」

その言葉に俺は顔を上げ満面の笑みを浮かべる澪と見つめ合う形になる、でも少し気まずくなった俺は早々に目を逸らした。そんな俺を見て、澪はクスッと笑ってまた歩き始める。

そして俺は澪の後ろではなく隣を歩きさっきの言葉の真意を確かめる事にした。

「なー、なんで俺が受け入れてるって言ったんだよ。」

「ふっ、なに気にしてるの?いつもならスルーする癖に。」

「いや、まぁ、そうかもだけど・・・。

何となく気になって。」

「ふーん、まぁ良いけど。

別にたいした意味とか無いわよ、ただ今後も女の子に振られた時当て馬体質を理由にするんだろうなって思って言っただけ。」

「うぐっ!別に理由には・・・しないと思う。」

「言い淀んでる時点でアウト。

有志が全部悪い訳じゃないけど、あんた別に今までの女の子達ガチで好きになってないでしょ?」

澪の言葉に俺は何も言い返せなかった。それはきっと本当の事だから。俺の様子を伺いながら澪は言葉を続ける。

「可愛いからとか優しいとか単純な理由で気になって接するのは分かるけど、有志はそれが好きの感情には変わらなかったのよ。

んで、その事を有志よりも女の子達の方が察して有志よりも・・・自分の事を好きになってくれた違う相手を選ぶ。それであんたは当て馬になるって訳。」

なぜだか認めたくないのに澪の言葉が突き刺さる。

「あー、まぁ、そーかもな・・・。」

やっと出た言葉が思った以上に落胆した声で少し驚く。そんな俺を気遣う様子も無く澪は元気よく話を続け、その内容に俺は衝撃を受けた。

「だーかーら!これから有志は色んな女の子達と会って恋を学びなさい!!

この私が協力してあげるから、それになんでも経験が大事だし!」

「・・・・・・。はっ、はぁあ??」

またもや住宅街に俺の声が響き渡ったのだった。

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