第五百五夜『再発見と再発明-lightning helix-』

 2023/11/08「島」「コタツ」「きわどい主従関係」ジャンルは「時代小説」


 ある半島である男が商談のテーブルに立っていた。彼は融資ゆうしの申し出をしており、自分の発明の青写真を見せる形で資産家の人々にプレゼンを行なっていた。

「すまないが、お前のその螺旋型翼膜式搭乗機らせんがたよくまくしきとうじょうき……? とやらに対する融資の申し出は飲む事が出来ない」

常識じょうしきで考えてみろ。空を飛ぶ鳥を見れば変わる、そんなオモチャが空を飛ぶ事など出来ん」

「全く、お前の発明品とやらには毎度辟易へきえきさせられる! この間も火鉢ひばち内蔵ないぞう毛布とか言う、危険で意味不明な物を持ち込んで来たな? そんな物、火事を起こすだけだと子供でも分かるだろうに……」

 心無い言葉を三方から浴びせられ、融資を受けようとしていた男は、これ以上この場に居る理由は無いと、そそくさと部屋を出て行った。

 その様子を見て、資産家達はせせら笑いを浮かべて男の背を眺めていた。彼等にとって出資は勿論財産管理の一環ではあるのだが、どちらかと言うと娯楽の方が本質だった。つまり、愚者ぐしゃがとぼとぼと肩を落として退室する様を見る事こそ、彼等の目的の一つと言っても過言では無かった。


 それから数百年の月日が過ぎた。


「やった! やったぞ! 遂に安定して浮遊した!」

「やりましたね先生! さすがです!」

 工房の中では人形を乗せた搭乗機が空中を浮いており、動力が止まったり爆発ばくはつする様子も無く、人間が乗っても全く問題が無い様に見えた。

「さすが先生、ゼロから一を生み出す天才ですね!」

「いやなに、これは私一人の発想ではない。何でも今から五百年前には鳥を観察して、自力でヘリコプターを発明しようとしていた天才画家も居たのだ」

 先生と呼ばれた壮年の男性は、手に持ったノートや資料の写しを手に持ち、興奮こうふん半分冷静れいせい半分と言った様子で言った。

「画家? うそでしょう、五百年前の画家がヘリコプターを考えついたなんて」

 先生の助手らしい青年は、先生が大袈裟おおげさなホラを吹いていると確信し、笑い出した。

「ああ、皆嘘だと思っていたらしい」

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