第三百三十八夜『安全で安易な安眠で安息-Rest In Peace-』
2023/05/18「台風」「妖精」「いてつく主人公」ジャンルは「SF」
お陰で俺は朝だけでなく、昼も夜もあくびをしてばかりだ。そのせいで、会社の
「そりゃお前、きっと睡眠の質が悪いんだよ。酸素カプセルって知ってるか? いや、そんな
そんな俺を心配してか、もしくは
同僚の言う通りの所在に行くと、その施設は確かに在った。会社からは
その酸素カプセルなる施設は地下街に店を
フロントに部屋の料金を払い、係の人に奇妙な通路へと通された。
俺はフロントで渡された一〇二と書かれた
なるほど、これが同僚の言っていた酸素カプセルとやらか! 体験談の通り、確かに深い森の中に居る様な
部屋の中は
俺は部屋に入ると、扉を開けた時同様の爽やかな空気を感じながら、
「あの酸素カプセルってのは素晴らしいな! 一時間程仮眠を取っただけなのに、何時間も寝た様な充足感だ!」
今の俺はあくびとは無縁だった。この歓喜を、酸素カプセルに教えてくれた同僚に話す。すると同僚は、お前もこっち側に来たかとでも言いたそうなしたり顔で、俺の話を聞きながら
「そうだろう、そうだろう」
「いやもう、あんな気分良く眠ったのは子供の時以来。毎日でも通いたいくらいだ!」
すると、
「それはやめた方がいいんじゃないのか? 俺は三日に一度か、或いはもっと期間を置いて体が不足を感じたら使う様にって言われたぜ?」
「毎日やると、何か悪影響でもあるのか?」
「いや、体に悪いとか害があるって聞いた訳じゃない。ただ、慣れってのは恐ろしい物だからな。知らないけど、多分酸素カプセルで休憩するのが当たり前になって
同僚は俺の質問に対し、心配そうに
「バカバカしい、森林浴みたいな環境で仮眠を取るだけなんだろう? 中毒も依存症もあるものか」
俺はあれ以来、酸素カプセルに病みつきになった。
何でもフロントの人は二度目以降は予約を取らないと宿泊出来ないと言ったが、俺はそれはもう
それに飲酒も
それに対し、酸素カプセルを使った俺は活力に
そして今も正に、これから酸素カプセルでの仮眠の時間だ! もう数回目の
気分が悪い。別に体の具合が悪い訳では無い、何か嫌な夢でも見ていたのか
夢の内容はぼんやりとしか覚えてないが、オズの魔法使いよろしく台風に
俺は酸素カプセルのカギを内側から開けて外に出ると、見慣れた宿泊施設の通路には誰も居らず、何とも言い
「今日は他の客は居ないのか? いつもならポツポツ他の利用者と会うものなんだが……」
その違和感の正体は、確かに
「一体何が起こっているんだ? 鍵はここに返せばいいのか?」
俺は訳が分からないまま、鍵をフロントに置いたまま外に出た。しかしやはりおかしい、普段は活気がある地下街が人っ子一人居ないのだ! この地下街は居酒屋や雑貨屋、占いの館やカレー屋なんかが立ち並んでおり、深夜でも利用者がポツポツ居て、だからこそ宿泊施設もああして息づいている筈なのに!
「何かがおかしい……一体何が起こったと言うんだ?」
俺は地下街を
「太陽が赤くて大きい……?」
この光景は、俺の知っている地球の空ではなかった。しかし建物などの様子はそのままで、まるで俺は周囲の環境ごと、たった一人でよその惑星へワープしてしまったかの様だった。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおい! 誰かあああああああああああああああああ! 居ないのかああああああああああああああ! 聞こえたら返事をしてくれええええええええええええええ!」
俺は力の限り叫んだ。絶叫はビル群に
俺以外の人類は全員どこかへ消えてしまったのではないか? と、そう考えが脳をよぎったその瞬間だった。
「そんな叫ばなくても聞こえますよ、
耳元で声がした。俺は声の主の姿を見ようと横を向くと、そこには手のひら大の体長の、羽を有した人型の何かが、空中で虫の様に羽ばたいてホバリングしていた。
「え、あ、あなたはな……誰?」
あなたは何と言いそうになったが、口を
「今何って言いそうになった? 私は人間、名前はウィーナ。しかし驚いて心臓が飛び出るかと思った、まさかあの遺跡のカプセルに保存されていた古代生物が生きてて、しかも自力で出て来ただなんて……」
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