第二百九十八夜『入力する人、出力するもの-Robot-』

2023/04/04「宇宙」「ロボット」「新しい記憶」ジャンルは「SF」


 今日もまた、私の作品がほし新一しんいち筒井つつい康隆やすたかに似ているとのコメントが届いた。

 コメントそのものは私の作品を肯定こうていするものだが、問題点はそこではない。実はあの作品は星新一と筒井康隆の文章を入力インプットし、コンピューターで出力アウトプットをしたものだ。

 それだけではない、私のある作品はあの寓話ぐうわ作家の作品のアイディアを盗用した物だし、ある作品はある児童文学を盗用している。そもそも私の作品の命名形式はあるライトノベル作家の方式をまるままマネしている、これまで何もかも露見ろけんしなかったのは奇跡と言う他無い。正直に言うと、その点を言及されていない事は私が一番疑問に思っているところだ。

 その様な事実はどうでもいい、都合の悪い事実は指摘してきされて初めて認知されるのだ。つまり星新一と筒井康隆に似ていると肯定される事はどうでもいいが、星新一や筒井康隆に似ていると指摘される事は大問題なのだ。真実を指摘されなくて本当に良かった、危うくあの手この手で隠匿いんとくをしなければならないところだった。

 恐らく今回コメントを下さった方は、ロボットだの人工知能だの宇宙だのを題材にしたところ、何となく星新一っぽいなと思っただけだろう。何せ星新一を入力インプットしたのは事実だが、あの作品を出力アウトプットするのには星新一以外の作品も活用しているのだから、あのコメントは厳密に言うと正鵠せいこくを射ているとは言えない。

 だが今回はたまたま運が良かっただけだ。もっと多くの作品を入力インプットせねばならない、もっと多くのアイディアや表現方法を入力インプットして安易に何を元に出力アウトプットしたか分からない作品を書かねばならない。

 今私がやっているのは、海外の作品を原語で入力インプットして、そして和訳する形で出力アウトプットする事だ。こうすれば既存きぞんの作品の著作権に引っかからずに済む、今の時代は何がどこでとがめられるか分からない、こうした創意工夫は我々人間の義務と言っても過言では無いだろう。


 民家の中で、老夫婦がテレビを観ながら雑談をしていた。

「今日もあの子は頑張がんばっているようだな」

「そうですね、何か夜食でも持って行ってあげましょう」

 老婆はそう言うと、お湯を沸かしてたなから何か食べる物を取り出そうとした。

「いや、作業の邪魔になってしまう。僕達が何かと気を使っても逆効果になるだけだ」

 おきなは諭すように言って、老婆を制止した。

「そうですね。あの子は今、機械の様に本を読みあさりながら本を書いているみたいだし、邪魔しちゃ悪いわね」

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