第二百四十一夜『密漁で捕まらない方法-closed circle-』

2023/01/30「水」「リボン」「燃えるカエル」ジャンルは「指定なし」


 みなさん、こんにちは。裏社会系動画配信者、虎狼痢コロリ毒座衛門ぶすざえもんです。

 普段は裏社会あるあるネタを持ちネタとしているわたくしですが、今日は少々趣向を変えまして、特定の罪に問われない方法を話そうかと思います。


 みなさんと言うと、どのような物と考えますか? 狩猟解禁期間以外に獲物を撃ち殺す行為? 免許も無しに動物をる行為? 他人が養殖している動物を盗む行為? 実は今話した例は、語弊ごへいを恐れずに言うとで捕まらない可能性があります。

 そうですね……例えば私が自分の土地で権利を得て、海の中で貝かウニか海藻を育てているとしましょう。ここに不埒者ふらちものが水着一丁でやって来て、私の土地で育てていた生牡蠣なまガキをセイウチのごとくその場でペロリ、ウニをスプーンでほじくり海水にくぐらせてムシャムシャ、ついでにワカメをサラダ感覚でかじり散らかしたとしましょう。実はこれ、私はこの不埒者を密漁者として警察に突き出す事は出来ません!

 何故かと言うと、密漁は簡単に言うと権利無くして行なう漁業。潜ってその場で食べる行為は漁業とは言いませんね? だってその場で食べちゃっているのですから! 私が受けた被害は盗み食いとも言うべき物で、強いて言うなら窃盗せっとうとか業務妨害ぎょうむぼうがいとか言うべき事です。

 おっとお待ちください、今リスナーの皆さんから別の罪に問われるのなら意味が無いじゃん! と、そう言った声を頂いたかも知れませんが、そうではありません。大きな理由が二つあります。

 まず一つ、密漁は権利の無い漁業と先程申しましたが、これは言い換えると他人の権利を侵害する漁業です。逆に言えば、そこらへんを泳いでいたら口の中に海の幸が飛び込んで来たんですよーだの、命の危機にひんしており命をつなぐ為に仕方なしにやったのですよーだの、そう言った言い訳が立てば許される傾向にあります。

 そして二つ目、法律だの権利だのを行使する側にとってはこっちが重要。実は密漁は簡単に出来る反面、重罪です。例えば窃盗や業務妨害で警察に捕まっても、それらは罰金五十万円で許される事もあります。しかし密漁はそうもいかない、密漁は反社会勢力の資金源になると目されている事もあって一千万円の罰金刑になる可能性すらあります。いいえ、時代が時代なら海賊行為は縛り首と言う国もあるので、これでも寛容かんような方かも知れません。更に時代をさかのぼった場合、ハムラビ法典には盗んだ額と同じだけの罰金刑とあるので、現代の密漁者は辛くあたられているとも言えますね。

 もっとも、密漁者が完膚かんぷ無きまでに重罪と裁かれるのは反社会勢力との繋がりが認められた場合である傾向にあるので、見せしめの意味合いが強い法律と言えるでしょうね。

 ああそうそう、私が先日この話を触りだけ……即ちその場で食べてしまったら密漁には問われないと言う話を、ちょっとした伝手つてのある知人にしたのですが、その知人と連絡が取れなくなりました。逮捕パクられたのならば、何らかの形で私の耳に入る筈なのに不思議な事もあるものですね。

 さて、話を密漁に戻しましょう。先日私の知っている貝の養殖場に妙な物が見つかったそうです。

 その養殖場は海中で貝を育てているのですが、貝の天敵になる動物……例えばカエルアンコウと言う魚をご存知ですか? 養殖場は深海ではないのでアンコウだなんて遭遇そうぐうしませんが、自然界ではアンコウの様に何でも食べる動物は貝やウニにとっては天敵、そう言った動物を退ける為に一種のリボンハエ取りの様な罠をしかけている様です。あ、最近の方はリボンハエ取りをご存知無いかもですね、分からないリスナーの方はお母さんお父さんに尋ねてみるといいですよ。

 とにかく、貝やウニの天敵になる動物をからめ取って動けなくする罠を張ってある所に妙な動物が引っかかったそうです。大分時間が経ってから見つかった様で、引っかかったその死体は魚に食われてボロボロだったそうです。例えばアナゴとかタコは動物の肉だけでなく、体の構造を活かして腸も食べます、仮に人間の水死体があったら肛門やら小腸から食べる動物も居ると言う訳です。他にも大半の魚は柔らかい肉を優先するので、人間の水死体は顔から原型が無くなると言うのは有名な話ですね。

 貝やウニの捕食者だけ絡めとる罠に引っかかっていた動物が何の死体かは聞かなかったのですが、奇妙と表現しているのを聞いたので、少なくとも魚介類ではなかったのでしょうなあ。

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