第二百二十七夜『LGBTに関する乱文と取るに足らない本文-outer space ordinance-』

2023/01/16「晴れ」「虫アミ」「正義の高校」ジャンルは「純愛モノ」


 本文はLGBTに関するショートショートである。LGBTに関するショートショートなのだから、LGBTに配慮はいりょした内容でなければならない。

 そもそもLBGTに配慮していない文章とは何か? 一例としては、コメディ作品によく見られる同性愛者の描写が挙げられよう。理性の無いケダモノの様な性質を有する同性愛者の、多くは髭を生やした巨漢がオチやコメディリリーフとして登場すると言うのは、それこそLGBTに配慮していない作品だと言える。別にコメディ作品である事が問題でもないし、オチ担当である事が問題でもない、同性愛者を愛や理性の無いケダモノの様に描写するのが問題なのである。あなたも、ヘテロラブの男性を追いかけ回す髭の生えた同性愛者の男性が登場するコメディ作品は恐らく見た事があるだろう、これが同性愛者とは愛や理性の無いケダモノとする描写と言う事である。

 無論、それはそのコメディリリーフ担当のキャラクター個人の描写であって、同性愛者全体をそう定義しているのではない。と、そう反論する人も居るだろう。しかし架空の悪玉と言うのもまた、デリケートな問題なのである。悪人ならば悪人と一目で伝わる名前をキャラクターに与えるべきと言う運動も有る、江戸時代には悪玉は青い化粧けしょうをするか黒い幕の向こう側で高笑いをしていなければならないと言う風潮ふうちょうさえ有った。厳密にはケダモノのごとき同性愛者は問題ではなく、悪人だから悪人らしい名前と風貌ふうぼうだと受け取り手に伝える事を先行しなければならない。西暦千六百年代から続く、創作の伝統である。

 ではどうすればいいのか? 特別な事をせず、普通にしていればいいのだ。そもそもLBGTの人にとってはたまたま好きになった相手が同性だったり、人格や心を構成物の中に女性性や男性性が多かったり少なかったりするだけで、当人にとっての普通ないし偶然でしかない。自分にとっての普通と、相手にとっての普通を認識すれば、それだけでいいのだ。

 逆に言えば、私はLGBTだぞ! だの、LGBTに配慮が足りないぞ! だのと相手を害し、動きを阻害そがいするのは根本的にお門違かどちがいであると言えよう。相手は普通にしているのだ、相手の普通をこちらの普通でないからと槍玉に挙げるのは相手の認識が出来ていないとしか言いようが無い。

 誠、LGBTに配慮が無いやからである。


 雲一つ晴れた空、空飛ぶ円盤が浮いていた。空飛ぶ円盤が空中に浮いているにも関わらず、誰も声を挙げていない所を見ると、恐らくあの円盤は一種のステルス機と言う事か。もしくは偏光機能へんこうきのうや何やらを用いて、文字通りのステルスなのかも知れない。

 円盤の中ではやはりと言うべきか、人間とは異なる肌色の宇宙人が宇宙服を着て何やら計器を操作していて、その傍らには椅子に座る形で拘束された高校生が居た。

「ふうむ、困ったな。翻訳機ほんやくきを見るに、確保したサンプルは『自分はアブノーマルな人間だからデータを取るうえで役に立たないぞ』と言っているが、テレパス機には『自分は普通の人間だ』と出ているぞ」

「実験に非協力的故に、嘘を吐いて逃れようと思っている可能性はありませんか?」

「そんなまさか。地球人は極めて文化的で理知的な知性体だと、先遣隊の調査で判明している。そんなすぐ露見する嘘を証言する生物とは思えない」

 後者の宇宙人は前者の宇宙人の言葉を、一行にも値しないつまらない仮説だと切り捨てる様に言った。

「ふむ、優秀な調査員の私は思いつきました。地球人は口で言う事と、心で言う事があべこべになる珍妙な生物なのではないでしょうか?」

「調査員になっている時点で優秀も妄執もうしゅうも無いと思うが、それは面白い仮説だ。もう幾人かサンプルを確保して、データを取ってみるとしよう。幾つか質問を行なったら、我々の事を鮮明せんめいに思い出せない様に暗示をかけるのを忘れるなよ。お前のいい加減な作業で、連帯責任の始末書を書かされるのは二度とゴメンだ」

「へいへい、分かりましたよ。しかしこの地球人が特別? と言うのは信じ兼ねますね。だって、どっからどう見ても他の地球人と大きな差異は感じられませんもの」

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