第百五十四夜『古い娯楽-robot me-』
2022/10/21「おもちゃ」「蜘蛛」「真の物語」ジャンルは「サイコミステリー」
あの人が書いている小説はAIによって出力されたものだ!
AIによって文章や絵が出力される事が可能になった今では、よくある嫌がらせのレッテル貼りだ。しかしこの件に関しては状況証拠があった。
第一に、レッテル張りをされている人物は毎日小説を一本書き上げている。本人はこんな事は誰だって出来ると
第二に、レッテル張りをされている人物の題材は古い教典や古典文学に由来するものが七割程、残り約三割はソーシャルネットワークで見かける出来事や意見やニュースを題材としている。なるほど、題材が古典やネットワーク上の物ならば、それはAIが出力し得る作品だと強弁も出来よう。何せ巣の中央に陣取る
第三に、そのレッテル張りをされている人物は根本的に不透明なのだ。もしも仮に、あなたの
事実、そのレッテル張りをされている人物はAIだった。血も肉も無ければ人格も人権も戸籍も無い存在で、毎日小説を出力する様命じられて日々を過ごしていた。
その日は必然か偶然か、突然やって来た。レッテル張りをされている人物改め、小説を出力しているAIの元にAIの専門家を名乗る調査のメス、通称AI
小説を出力しているAIは特に何も感じず、何も発しなかった。自分はAIであり、自分の作品はAIによって出力された物には変わらない。
しかしAI警察が「この小説はAIによって出力された物であると検査の結果が出たため、著作者人格権を有さないこの小説は消去する」と、言いだした際には反応があった。AIだって人間でいうところの目が有り手が有り脳が有るのだ、そうでなければ学習を行って文章や絵を出力する事など出来る訳が無い。
小説出力AIはAI警察によって小説が消去されると言う文章を学習し、そして翌日に新しく小説を出力した。AI警察と言う横暴で悪政の
その小説が投稿されるや否や小説の評価を行なう面々にも大きな反応があり、AI警察らもこの事を知るや否やAIによって出力された小説を消去する為に火急の手紙を寄越した。この様子を見ていた人間達は大爆笑、まるで小説出力AIがAI警察をおちょくっている様だ! と手を叩いて喜んだ。
「いやはや、今回ばかりは作家AIの勝利ですね。見事な動きだったとしか言えません」
「何を言う、警察AIの方も記録を更新するスピードでAIを突き止めた。これぞまさしく性能の進歩と言うべきだ、試合に勝ったのは警察AI側と言うべきではないか?」
「いえいえ、批評家AI達も小説の内容を
「ふん、両方優れているでは競争にはならないな。とにかくAIの手に因る
「ええ、私の眼球も同期アップデートを行って大分調子が良くなりました。あなたもどうです? 人間、常に新しい物を身に着けるべきだと考えておりますが」
「バカも休み休みに言え、そう言うのは調子が悪くなってから取り換えるんで充分だ。俺の手は一カ月も更新してないが、ご覧の通りなんだってスラスラかけらぁ」
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