第百二十一夜『髪を洗う時、目を瞑る時、背を向ける時-No kidding-』
2022/09/12「冬」「リボン」「真の子ども時代」ジャンルは「ミステリー」
例えば、リボンを解き、服を脱ぎ、冬の寒さを身に感じながら風呂場に入り、そして風呂場で目を閉じて髪を洗う。すると、背後に誰かいる様な気がする。
勿論目を開けて鏡を見ても、誰も居ない。その人物はそんな事はしないが、仮に振り返っても誰も居ない。
これが感受性豊かな子供ならば、背後に目に見えないバケモノが居ると想像するかも知れない。或いは、子供内に伝わる怪談とかホラー作品に登場するバケモノが背後に居る気がしてくる事もあるだろう。
しかし、人間が風呂場で超常のバケモノに捕食されるだなんて事件は未だかつて無い。これを聞いた人は、風呂場で足を滑らせて亡くなる事件があるではないか! あれこそバケモノの仕業ではないか? と言う人がひょっとしたら居るかもしれない。
それはない、断言するが絶対にない。
あなたは体験者や被害者が気絶する事で、或いは気絶した後に生還する事で幕を閉じる怪談を聞いた事は無いだろうか? それも語り部や主人公が相対した存在が、殺意を露にしているにも関わらず、である。
しかし、これらの怪談には何も矛盾は無い。何故なら、これらのバケモノは人間を驚かせたり怖がらせる事が目的だからである。そして、風呂場の視線の持ち主もこれが目的だ。
人間が珍しいモノ、人間が羨ましいモノ、人間が懐かしいモノ、人間が愛くるしいモノ、色々居るが言動に差異は大きく見られない。
何故そんな事をするかと言うと、そうするのが楽しいからだ。逆に言うと、そうしないと退屈極まりないとも表現できる。何せ人間はそれらの存在を知覚していたり、していなかったりしているのだ。まるでそれらは半導体だ。ならばからかってやらないと損という物であろう。あなたが独りで居る時に視線を感じた事があるならば、それが原因だ。
何故私がこの様に専門家の如く、そして断言出来るのか不思議に思っているかも知れない。その答えは実に簡単だ。
今この瞬間、あなたの後ろには誰が居ますか?
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