Memories of Rion〜愛は時を越えて〜

彩歌

プロローグ

 僕は守れなかった。

 人間のもろさを知らなかった。


「……私の分まで生きなさい、リオン」

「それは命令ですか?」

「……えぇ、最期さいごの命令よ」

「はい。了解しました、マスター」

「……愛してるわ、理緖りお

「愛ってなんですか?理緖って誰ですか?」


 その問いに答えはなく、マスターは命を終えていた。


 涙は流れない。

 僕には感情がないから。

“悲しみ”を知らないから。


 それなのにチクチクと胸が痛みを訴えている。


「マスター、この痛みは何なのでしょうか?僕は壊れてしまったのでしょうか?」


 その問いにも答えはなく、強く冷たい風がリオンの銀糸ぎんしもてあそんだ。


「家に帰りましょう。マスターの身体が冷えてしまいます」


 僕はマスターの亡骸なきがらを抱き上げ、家へと向かう。マスターの身体はまだ熱をびていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る