憔悴した同僚から「妻から死んだものの様に見なされている」と相談された俺は。

江戸川ばた散歩

1 同僚が泣きついてきた

 何とかしてくれよロイ、と同僚のサムがある朝出勤するなり泣きついてきた。


「どうしたんだよ一体」

「メイミが…… メイミが頭の中で俺を殺しているんだよー!」


 はあ? と俺は思わず声を上げてしまった。

 奴の両肩に手を当て力を掛け、落ち着け、とゆっくりと言う。


「それは今日の仕事より優先することか?」

「この気持ちの動揺のまま俺は仕事に就くことなんかできない!」 


 ふむ、と俺は考えた。

 俺達は帝都を預かる治安部隊だ。

 最近何かと物騒な事件が多いので、常に気が抜ける状況ではない。

 不安定な精神の同僚と共に仕事はできない。


「ともかく隊長のところへ行こう。話はそれからだ」



「……ということであります」


 俺は自隊の隊長のところへ行き、かくかくしかじかとサムの言ったことを繰り返した。


「詳しくはサミュエルから直接聞くのが最短だと思われます」

「うむ、判った座りたまえ」


 隊長は俺達に椅子を持ってきて座る様に命じた。


「それでサミュエルよ、一体お前の奥に何があったというのか? 順序立てて話してみよ」


 隊長は落ち着いた声でそう問いかけた。

 若い隊員が結婚すると、何かとこの様な話はあるらしい。

 いや正直、俺も妻のルリアとのことを相談したことがある。

 だからこそ隊長に、とまず言ったんだ。


「はい。先日泊まり込みの十連勤が終わった後に家に帰った時のことです」


 奴は話し出した。

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