憔悴した同僚から「妻から死んだものの様に見なされている」と相談された俺は。
江戸川ばた散歩
1 同僚が泣きついてきた
何とかしてくれよロイ、と同僚のサムがある朝出勤するなり泣きついてきた。
「どうしたんだよ一体」
「メイミが…… メイミが頭の中で俺を殺しているんだよー!」
はあ? と俺は思わず声を上げてしまった。
奴の両肩に手を当て力を掛け、落ち着け、とゆっくりと言う。
「それは今日の仕事より優先することか?」
「この気持ちの動揺のまま俺は仕事に就くことなんかできない!」
ふむ、と俺は考えた。
俺達は帝都を預かる治安部隊だ。
最近何かと物騒な事件が多いので、常に気が抜ける状況ではない。
不安定な精神の同僚と共に仕事はできない。
「ともかく隊長のところへ行こう。話はそれからだ」
*
「……ということであります」
俺は自隊の隊長のところへ行き、かくかくしかじかとサムの言ったことを繰り返した。
「詳しくはサミュエルから直接聞くのが最短だと思われます」
「うむ、判った座りたまえ」
隊長は俺達に椅子を持ってきて座る様に命じた。
「それでサミュエルよ、一体お前の奥に何があったというのか? 順序立てて話してみよ」
隊長は落ち着いた声でそう問いかけた。
若い隊員が結婚すると、何かとこの様な話はあるらしい。
いや正直、俺も妻のルリアとのことを相談したことがある。
だからこそ隊長に、とまず言ったんだ。
「はい。先日泊まり込みの十連勤が終わった後に家に帰った時のことです」
奴は話し出した。
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