米
戦国チートで石鹸、椎茸栽培、清酒と並んで塩水選がよく取り上げられるが、他に稲作で実施可能な物とそれぞれの収量増加率は如何程か気になったので調べてみた。
尚これは上里来生氏の『戦国時代で可能なチート覚書』を補足する形ではあるが同氏との繋がりはなく、上記の方が詳しい。
保温折衷苗代……1942年に長野県軽井沢の荻原豊次氏が開発した技術で、水面より高い短冊状の苗代を作り、そこに発芽した種を蒔く。
その上に焼いた籾殻を種が完全に隠れる程厚めに敷き、更に油紙を被せて保温、風が吹き込まないように周囲を土で固定し縄を千鳥状に張る。
2週間程度で紙を持ち上げる程育つので紙を取り除き土の高さまで水を張る。
サイトにより籾殻の前に覆土を行うと書いてあったり、紙を外すタイミングと水張りが前後しているが、汚れの飛散しやすさや通気性を考えると覆土はなく紙の除去は水張りの前が適当と考えられる。
北海道で稲作を成功させた中山久蔵氏は田んぼに風呂の残り湯を引き込み苗代を保温しているのでそれでも代用可能。
最盛期の昭和30年代前半には東北地方を中心に全国の水田の1/6に普及した。
効果としては、
苗腐敗病、立ち枯れ病が発生し難く、いもち病や冷害に強い苗が出来る。
種まきから田植えまで30~50日かかっていたのが最短2週間で済む。
土地や気候により差はあるが10日から1ヶ月は田植えが前倒しされる※1。
従来より小さい苗でも移植に耐えられるので軽く、移動が楽。
年内までかかっていた作業が10月一杯で終わる。
従来より窒素分が少なくて済む。
等。
収量は品種によりバラツキがあるが以下の地域で、
千葉
水稲1号………10%
水稲29号……11%
ギンマサリ…22%
ヤチコガネ…17%
京都
藤坂5…………25%
N17…………21%
島根
藤坂5……24%
N17………23%
上昇した。
明治以前の米と形質が最も近いであろう登場が最も早い水稲1号を基準として下限10%※2
デメリット……これは現代もだが……収穫が炎天下の8月となる上に年間作業時間がやや増える。
従来農法よりカリウムとリンの使用量の増加。
トータルで肥料使用量増。
室内育苗……1957年に長野県飯山市で松田順次技師により開発。
雪が残る程温度が低すぎて上記の保温折衷苗代が使えない所でも早く植えられるようにと考案され、置き換える形で普及。
機械化への道を拓いた育苗法。
電熱で保温する現代と手段は異なるが工程はほぼ同じ。
初期は30×60×3㌢の箱に土と種を詰め火鉢で保温。
品種や気候にもよるが芽が出て10日経ったら田植え。
人力としては最後発の田植機がこれに合わせて開発されている。
収量は品種、育成期間により異なるが30~50%増加。
試験に協力した同市の農家からは
「収量が1石(150kg)増えた」
との証言が残っている。
品種は不明だが同地で実施された試験では、おが屑と炭を混ぜた培地に種を撒き、1ヶ月間昼20℃夜15℃の水温を維持すると二枚葉が出る。
それを植えると収量が50%増えたという。
導入前(1955年)の全国平均収量が335kgだったのに対し、上記の田植え機が発売された65年には390kg※3、普及後の75年には481kgに増加した事を考えると他の要素を割り引いても田植機導入が前提だが40%は堅い。
はねくり備中……大正時代発明。
人力でも梃子の原理で深く掘れるので持ち田が棚田で牛馬が入れないか貧しくて使えない場合は導入して肥料を鋤き込む事で収量が最大15%アップ。
金肥……下肥や鰯等。
殆ど地産地消だった慶長年間と物流が改善された明治元年(1868年)の反収を比較すると150kgから180kgに伸びている。
塩水選が発明された1880年代は200kg。
塩水選で収量が10%上昇したというデータを裏付けている。
尚火山の国日本の土壌は酸性の為、田畑に元肥を加える前に石灰を投入する必要がある。
室内育苗、はねくり備中、金肥、塩水選、並木植え……上記全てを導入出来れば寒冷期中の戦国時代でも収量は倍増する。
米の場合化学肥料を投与した時を10とすると有機肥料で8割、無肥料で6割に減少するので、少し前に紹介したリンや硝酸を加えれば更に25%増える。
麦は有機肥料にすると4割に減るので魔法で何とかしよう。
湯温消毒……乾燥させた種籾を60℃のお湯に10分、又は58℃のお湯に15分浸けていもち病他を防ぐ物。
この時の種籾の水分量は14%。
種籾を40〜45℃の熱風に4時間晒すと、水分量が10%未満になるので、それをを63〜65℃のお湯に10分浸けると発芽率は90%程度になるが苗を異常成長させる馬鹿苗病も防除出来るようだ。
ニホンミツバチの蜜蝋は65℃、和蝋燭は60℃で溶け、火時計に使われる線香の燃える速さは一定なので養蜂やお寺から蝋燭と線香を買おう。
乾田馬耕……収穫後の田を乾燥させ馬で田起こしを行う物。
クボタのサイトでは収量が倍近く増えたとあるが、山形では塩水選とのセットで明治20年代半ばから導入し160kgから250kgに増えた。
正条植え……苗を一定間隔に植える事で風通しとを良くし、除草しやすく栄養状態の均等にする物。
日本では明治30年以降に導入。
ポピュラーな並木植え※4を導入したネパールでは収穫量が40%増えた。
※1山形で10~15、千葉、京都で10日、室内育苗時だが長野の場合は40日前倒し。
※2藤坂5の登場は戦後。
※3発売は65年秋なのでこの年の稲作には全く寄与していない。
※4植える人の導線上の苗の間隔(株間)が隣接する人が植えた苗との間隔の半分以下となる場合の植え方。
田植え機では上記が一般的。
PDFが多い為参考サイトのみ記載。
保温折衷苗代
https://kotobank.jp/word/%E4%BF%9D%E6%B8%A9%E6%8A%98%E8%A1%B7%E8%8B%97%E4%BB%A3-132594
https://www.jataff.or.jp/senjin/hoon.htm
https://www.jacom.or.jp/column/2020/06/200625-44978.php
室内育苗
https://www.jataff.or.jp/senjin/matu.htm
人力田植機
https://www.jataff.or.jp/senjin/nae.htm
収量
https://www.kubota.co.jp/kubotatanbo/data/yield.html
https://oita-shizen-kome.com/field/index-561.html
湯温消毒
https://agri.mynavi.jp/2020_03_19_112511/
蜜蝋
https://syumatsu-yoho.com/post/beeswax
乾田馬耕
https://www.kubota.co.jp/kubotatanbo/history/tools/tilling.html
https://www.okomeno-tawaragura-ask.jp/rice-story/2013/07/post-19.html
正条植え
https://www.servantleader.jp/seminer/past/664
※2024/10/24、土壌改良剤に石灰を追記。
カバタ山様御指摘有難うございます。
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