【コミカライズ連載スタート&1巻発売中】「門番やってろ」と言われ15年、突っ立ってる間に俺の魔力が9999(最強)に育ってました【Web版】
まさキチ
第1部
第1章 旅立ち
第1話 ガチムチコミュ障門番、呼び出される
4月1日1巻発売!
※書籍版とWeb版は別ストーリーです。
◇◆◇◆◇◆◇
――魔王との戦いは終盤を迎えていた。
ユニークスキル【勇者】である俺は、使命を果たすため魔王城までやって来た。
長く厳しい戦いだった。
かれこれ数時間に及ぶだろうか。
やはり、魔王は強大だった。
「やりおるのう。
戦いの
深くスリットの入ったスカートに、胸元が大きく開いた漆黒のドレス姿だ。
その笑みは妖艶で、壮絶で、圧倒的。
思わず俺のハーレムに加えたくなる。
「もう、ロイル、ちゃんとやって」
俺の右に立ち、金髪をなびかせるシンシアが無骨なメイスをこちらに向ける。
彼女はユニークスキル【聖誅乙女】の持ち主。
メイスで敵をぶん殴りつつ、回復魔法も使いこなし、そして、おっぱいが大きい。
「浮気はダメですっ!」
俺の左に立つのは、サムライ姿でカタナを持ったリンカ。
スカイブルーのポニテを揺らしている。
彼女も【阿修羅道】というユニークスキル持ちだ。
スキルを発動させると、バーサク状態になり、能力が大幅にアップして、敵を斬りまくる――普段はおとなしい子なんだけど、キレると誰よりも怖い。
そして、シンシアに比べるとずいぶんと控えめだ。
どこが、とは言わないけど。
そんな俺の内心を見透かしたのか、リンカがほっぺをつねってくる。
いたいいたいいたい。
「あるじどの、浮気したら燃やしちゃうよ」
後ろから可愛い声が聞こえてくる。
赤い髪を揺らめかせるロリっ子だ。
彼女は人間ではない。
【火精霊】のサラ。
すべてを燃やし尽くすと恐れられる存在だが、なんか知らんが、懐かれた。
拗ねると本気で燃やしてくるから、注意が必要だ。
ちなみに、三人とも幾度となく死線をくぐり抜けてきた頼りになる仲間で、そして――俺の嫁だ。
「ああ、わかってるよ。お前たちが一番だ」
誰がとは言わない。
みんな一番。
俺は平等主義者なのだ。
俺の言葉に三人とも頬を赤く染め、モジモジしている。
うん、みんながチョロくて助かった。
「さあ、そろそろ終わりだ。決着をつけよう、リリアスノート」
俺の言葉に三人は気持ちを入れ替える。
「うむ、望むところじゃ。かかって参れ」
サラが魔法詠唱に入る。
俺はシンシアとリンカとともに、魔王に向かって駈け出し――。
――カーンカーンカーンカーン。
夕暮れ時。
閉門を告げる鐘が響き渡る。
ああ、いいところだったのに……。
朝の開門の鐘とともに俺の仕事が始まり、この鐘で一日の仕事が終わる。
俺の名はロイル。
ここサラクンの街を守る騎士団の一員だ。
15年間この街で門番をしている。
仕事内容はなにもない。突っ立っているだけの仕事だ。
もちろん、【勇者】なんかじゃない。ただの門番だ。
物語の中だったら、2行くらいで出番が終わるセリフもないモブキャラだ。
さっきの話は全部、俺の妄想。
最近ハマっている2つの
15年間積み上げてきた俺の妄想力はダテではない。
仕事中はあまりにも退屈すぎるので、今みたいに妄想しているか、体内の魔力をこねくり回して遊んでいる。
一応役目はあるのだが、俺の出番は一度もなかった。
比喩ではなく、本当に15年間ここに立っていただけなのだ。
最初のうちは苦痛だった。
プレートアーマーを着て、槍を片手に門の脇に立ち続ける。
夏は灼熱、冬は極寒。
どんなに激しい雨や雪でも仕事内容に変わりはない。
しゃべってはならない。動いてもならない。
ただただ、モンスターの襲撃に備えるのみ。
サラクンの街には東西南北4つの門があり、俺の職場は北門だ。
北門は人通りが一番少なく、寂れている門だ。
街の北側は寒々しい。
小さな農村が点々とし、広大な森が広がっていて、その先には遠い山々――門からは目視できないが、故郷の村もその山にある。
それだけだ。
俺が騎士団にスカウトされたのは15歳のとき。
親父と一緒に村の農作物を売りに来て、声をかけられた。
2メートル20センチ、150キロ。
その巨体を見込まれたのだ。
高い給金と名誉ある肩書き。
親父は一も二もなく了承し、農民にとっては大金である入団金を持ってホクホク顔で村に帰っていった。
そうして、俺は晴れて騎士団の一員となった。
なったはいいのだが……俺には才能がなかった。
これっぽっちもなかった。
剣を振ったらすっぽ抜け。
槍を突いたら飛んでいき。
盾を持ったら弾かれて。
なにをやらせても呪われているレベルでダメな俺は、「突っ立ってるくらいはできるだろう」との当時の騎士団長の一声で門番をやることになった。
田舎から出てきて右も左もわからないまま、流されるようにして門番をやらされ、慣れた頃には辞め時を見失って、そのままズルズルと15年がたってしまった。
ここ北門には騎士団からひとり門番を派遣する決まりになっていた。
北の森で発生したモンスターが溢れると街を襲う可能性がある――という理由だ。
だけど、ここ数十年、森からモンスターが溢れたことはない。一度もない。
よって、俺が活躍したことも、一度もない。
すくなくとも表向きは……。
15年間、カカシみたいに突っ立っていただけだ。
今日も昨日と同じ。
明日も今日と同じ。
この生活がずっと続くものだと思っていたある日のことだ。
昼過ぎに直属上官であるゲララがやって来た。
滅多に顔を合わせることはない。
たまに会う機会があっても、バカにしたり、嫌味を言ったりするだけのイヤなヤツだ。
それだけじゃない。
俺の意見を何度も何度も握りつぶしてきたサイテーのヤツだ。
「ロイル、伝令だ。団長が呼んでる。任務終了後、団長室に行けっ」
ニヤニヤと不愉快な笑顔を貼りつけたまま、ゲララが告げる。
口を開くのも億劫なので、小さく頷く。
それを見たゲララはフンと鼻を鳴らし、去って行った。
アイツがわざわざここまでやって来るなんて初めてだ。
用があるときは、呼びつけてくる。
嫌な予感しかしない。
胸がザワザワする。
よしっ。こんなときは現実逃避だ。
俺は夕方まで、妄想の世界に生きることにした。
――勇者になって、ハーレムメンバーとともに美女魔王と戦う妄想だっ!
妄想にのめり込み、あっという間に閉門の鐘が鳴る。
嫌な現実に引き戻された。
このまま、うちに帰りたい。
だけど、命令に背くわけにはいかない。
――はぁぁ。
内心で大きく溜め息をつきながら、凝り固まった肩を回し、カチコチになった脚を屈伸でほぐす。
仕事中は許されない行為だが、終業後なら文句は言われない。
北門で働く人間は俺だけではない。
犯罪者が街に入るのを取り締まったり、商隊の荷を改めたりする人間が必要だ。
彼らは騎士団所属ではない。
徴税局の職員とか、衛兵とかだ。
俺とは接点が皆無。
会話も皆無。
彼らは俺と違って、歩き、話し、ときには笑っている。
どれも俺には許されていない。
いかにも仕事してますな彼らを、最初のうちは羨ましく思った。
だが、15年もたつうちに、そんな気持ちはとっくに擦り切れている。
俺はいつも通り、彼らに軽く頭を下げて職場を後にする。
彼らからは返事はない。
俺のことを見もしない。
なにもせずに突っ立っているだけの俺のことなんか、路傍の石くらいにしか思っていないんだろう。
それももう慣れた。
いちいち気にしてない。
一日の疲れで重くなった足を引きずり、俺は騎士団本部へ向かった――。
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『ガチムチコミュ障門番、クビになる』
◇◆◇◆◇◆◇
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