<秘密> 14

十二月十一日。月曜日。

朝、チャイムと同時に

ナカマイ先生は教室に入ってきた。

挨拶の後、

ナカマイ先生は俺と目が合うとにこりと微笑んだ。


出席確認の時、

ナカマイ先生が

「今日は茜ちゃんは風邪でお休みです」と言った。

俺はその時初めて茜がいないことに気付いた。



昼休みが始まると俺は職員室へ足を運んだ。

職員室のドアの前で

中から出てきた人物とぶつかりそうになって

俺は咄嗟に身を引いた。

「あら三組の子ね。畑中先生ならいませんよ」

池島千代だった。

その時、池島の後ろから一色が顔を出した。

「お、お前は・・」

一色は俺と目が合うと、開きかけた口を閉じた。

俺達はしばしの間見つめ合った。

先に目をそらせたのは一色だった。

「池島先生達は今から何か用事があるの?」

俺は一色に目を向けたまま子供っぽく聞いた。

「ええ。ちょっと一色先生とお話が・・」

「い、池島先生!

 私、用事を思い出しましたので、

 その話はまた今度」

一色は胸ポケットから取り出した櫛を

髪にあてると足早に立ち去った。

池島はそんな一色の後姿を唖然と見つめていた。

「どうしたんだろうね、一色先生」

俺の言葉に池島は

「さあ?」

と不思議そうに首を傾げた。

あの様子なら釘を刺す必要はないだろう。



放課後、

俺と翔太と洋の三人は

「Paradise Garden 中之島」に行った。

茜がいないせいか、

翔太も洋も少し元気がなかった。

俺達は煙草を一本だけ吸って家に帰った。

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