<因果> 11

十一月十六日。木曜日。

この日、

四日ぶりにナカマイ先生が学校に姿を見せた。

彼女は少しやつれていたが、

それでも子供達の前では気丈に振舞っていた。

そんな彼女を見て俺は胸が痛んだ。


そしてこの日は珍しく茜が学校を休んだ。

前日の茜に

具合の悪そうな様子は見られなかったので

俺は不思議に思ったが、

翔太は

「そういえばここ二、三日、

 あまり元気がなかったような気がする」

と心配そうにしていた。

何だかんだ言っても、

翔太は茜のことを気にかけているんだなと

俺は少し安心した。


ナカマイ先生の復帰と時を同じくして

隣のクラスに新しい教師が赴任してきた。

犬山啓介(いぬやま けいすけ)

という二十代後半の優男で、

真ん中から綺麗に分けられたサラサラの髪は

校長ほど長くはなかったが、

それでも肩のあたりまで伸びていた。

その髪の質感からも

この男もカツラなのではないかと俺は訝しんだ。

犬山は清潔感のあるスーツに身を包んでいて、

何もかもがボス猿と正反対だった。

早速、女子生徒が黄色い声をあげていた。

一組の一色拓海にとっては強敵の出現だった。

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