<火種> 4

風の冷たさが冬の到来を予感させたある日、

俺はボス猿の問題に関して、

進展のない現状を打破すべく

ある作戦を実行することにした。

俺は午前中の授業の間に

ナカマイ先生の目を盗んで作業に集中した。

そして昼休みに俺は探偵団の三人を集めた。

「どうしたのさ、あっくん。

 皆急いでグランドにいったよ」

「何だよ、今日はドッジボールの日だぜ」

「早く行かないとコートが取れないわ」


「実は俺の机の中にこんなモノが入ってたんだ」

俺は三人の前に

乱暴に破られたノートの切れ端を広げた。

その切れ端の中央には定規で引かれた歪な文字で、


『葉山実果は中之島小学校の教師に殺された』


と書かれていた。


「こ、これって・・」

「な、何だよ、これ?」

「葉山実果ってあの葉山さん?」

三人は驚きながらも

興味津々に切れ端を見つめていた。


「何でこんな物が

 あっくんの机の中に入ってたんだろ?」

「この教師って誰だ?」

「これが本当なら、許せないわ」

三人の反応はバラバラだったが、

皆同じように興奮していた。

「待ってくれ。一つずつ答えるから」

そう言って俺は三人を制した。


「まず、翔太の質問だが。

 それは多分、

 俺達探偵団の活動を知ってる誰かが

 入れたと考えていいんじゃないか?」

三人は「なるほど」と頷いた。


「次に、洋の疑問に対してだが、

 この教師が誰なのかは今のところわからない」

この作戦を実行するにあたって

最も注意しなければならないことは、

探偵団の三人にも真実は隠し通すことだった。

真実は俺の胸だけにしまっておく。


「最後に茜の意見だが、

 俺も茜に同意する。

 この紙に書かれたことが本当なら俺も許せない。

 だから皆に協力してほしいんだ」


「協力?」

「何をすればいいんだ?」

「私達にできることかしら?」

三人は首を傾げた。

「簡単なことさ。

 この紙に書かれたことを

 学校中に広めればいいんだ。

 そうすれば必ず犯人は尻尾を出す」

そう。

この噂が広まれば犯人はきっと動揺するだろう。

平常心ではいられないはずだ。

その結果、何らかの行動に出る可能性がある。

俺はそれを見逃さない。


俺達はすぐに作戦を実行した。

人の口に戸は立てられぬの言葉通り、

この話はあっという間に学校中に広まった。

そして探偵団顔負けの犯人探しが

好奇心旺盛な子供達の間で始まった。

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